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勇者たちの歴史
西暦編
第五話 タイム・リミット@
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いえ、そんなことはないと思いますよ』
 いいですか、と言い聞かせるように歌野は語る。
『若葉さん、私とあなたが今の関係になるまで、どんな話をしてきたか覚えていますか?』
「どんな話? ……そうだな。互いの状況報告に、私からは授業や訓練での様子を、白鳥さんからは畑仕事の話をよく聞いたと覚えている。それから、いかにうどんが素晴らしい食べ物かを、」
『いいえ、蕎麦がいかに優れているか、の間違いです』
 ……互いに譲れない領域を再確認しつつ、歌野が軌道修正を図る。
『えっと、つまり私たちは、互いに話したいこと、聞きたいことを会話の中で出し合ったんです。今なら、私は若葉さんがどんな人なのかだいたい分かるようになりましたし、それは若葉さんも同じでしょう?』
「ああ――――そうだな」
『冬木の遠坂さんとの通信も、同じことだと思います。若葉さんの方から、遠坂さんに聞いてみたいことをぶつけてみるのもいいんじゃないですか?』
 なるほど、と今度は納得がいった。
 いつも、若葉の方から世間話を持ち掛けても、そつなく返されてしまっていた。だが、向こうの内容に関係することなら、情報の共有も兼ねて答えてくれるかもしれない。
 そこから、会話の起点になれば、自然と話も弾むだろう。
 駄目ならまた、別の話題を見つければいい。
「ありがとう、白鳥さん。何とか、次の通信へ向けた方針が定まりそうだ」
『いえいえ、それでは若葉さんの悩み事も解消された所で、いつもの勝負を、』
「ああ、今日こそは決着を、」
 普段通り、苛烈な(蕎麦・うどん)論争を繰り広げようと高まった二人の熱意に、校内に響くチャイムが水を差す。見れば、時計の針がタイムアップを告げていた。
「……すまない、思った以上に付き合わせてしまったようだ」
『気にしないでください。明日の通信までに、長野の蕎麦の素晴らしさを納得させられるようなプレゼンテーションを準備してきますから』
「なるほど、ならばこちらもうどんのために、万全の態勢を整えるとしよう」
『明日の通信が楽しみです。では、これで。四国の無事と健闘を祈ります』
「諏訪の無事と健闘を祈ろう」
 不敵に笑い合い、通信を切る。
 手早く片づけを行い外に出ると、幼馴染が壁に寄り掛かって立っていた。
「お疲れ様です、若葉ちゃん。諏訪はどうでしたか?」
「ああ、特段大きな変化はなし、だそうだ」
 その言葉に、ひなたは安堵の表情を浮かべる。
 若葉たちにとって、諏訪は自分たち以外の勇者がいる唯一の地だ。気にならないはずもなく、彼らが無事なことは朗報以外の何物でもない。
「よかった。今日は、大きな侵攻もなかったんですね」
「小型の襲撃は一度あったらしいが、それもすぐに蹴散らせたと言っていたな。春の準備の邪魔をされてストレスフルだと、彼女は憤
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