西暦編
第四話 あの日C
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込めた魔力は十分以上、宝石の質も申し分ない。
「さあ、これで正真正銘、今のわたしの持つ全て。出し惜しみはしない。その代わりに、きっちり仕事はしてもらうから」
火が灯る。宝石の中で流転していた魔力が活性化し、与えられる命令を今か今かと待ち構えている。
魔術刻印も派手に魔力を吐き出させている。この一手、起爆剤ともいうべき干渉がうまくいかなければ――――いや、もう失敗した時のことなど考えるな。
「う、ご、けぇぇぇぇえええ………………ッ!!」
もはや疑うべくもない。
十分な火種を投げ込まれ、煽られた魔術炉心は、今や完全に稼働を果たした。
準備はこれにて終わり、過程を省略する願望器を扱う上で後は具体的な結果の形を提示してやればいい。
変化は、唐突に起きた。
「……え? そんな、逃げられた!?」
桜は、捕らえていた化け物たちが突然消失したのを感じた。
虚数空間で融解されていた個体も含め、全ての化け物が前触れもなく消えたのだ。即座に結界へ魔力の比重を傾けるが、
「これは、一体どういう、」
「――――桜、お疲れさま」
木に寄り掛かり、疲労困憊な凛の様子で、桜は辛うじて彼女の作戦が成功したことを悟った。
「上手くいったみたいでよかったですけど。何がどうなったんですか? 今の」
「あぁ、転移魔術で街にいた白いの全部追い出させたのよ。もちろん、それだけじゃまた侵入してくるだろうから、もう一つ手を打ったけど……、ってうわ!?」
意味ありげに笑う表情が、親の仇でも見るように豹変した。
ポケットから取り出した携帯電話――――旧式のいわゆるガラケーと呼ばれる機器を、取り出したまま停止する。振動していることから着信しているのだろうが、
「…………、…………ッ」
「あの、姉さん? 出なくていいんですか、電話」
桜が促しても、凛の手は携帯を握りしめたまま。
無言のまま、静かに葛藤していた彼女だったが、結局ため息と開くと通話ボタンを押した。
「…………もしもし、士郎?」
『よかった。電話に出られるってことは、無事に終わったんだな』
……通話は、何故かスピーカーで行われていた。
桜としても、士郎の無事が確認できたのは嬉しいのだが、ガラケーでスピーカー機能を使う姉の姿に一抹の不安を覚える。士郎の安否を気にしているだろう彼女に気遣って、ということだろうか。
……どうも、そうでない気がして仕方がない。
『それで、何なんだ、アレ』
「なにって――――結界よ。せっかく願望器を使うんだもの、思いつく限り一番強力なのを用意したから」
☆ ☆ ☆ ☆
『せっかく願望器を使うんだもの、思いつく限り一番強力なのを用意したから』
なるほど、そういうことか。
新都の外れ、教会の裏
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