西暦編
第二話 あの日A
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か……街の外からもどんどん入り込んでるから、それ以上にいるでしょうね」
……分かっていたことだが、状況は最悪だった。
ただの人間では抗うことも出来ない化け物が、五百以上。既に侵入を許している今、取れる手段は迎撃ではなく撃破。いや、一体も残さず殲滅するしかない。
だが、それも現実的ではない。
「あいつら、わたしのガンドじゃ怯むだけで傷もつかなかった。宝石を使えば倒せるけど、多勢に無勢でこっちの手が尽きちゃうだろうし……悪いけど、衛宮くん」
「ああ。あの化け物の相手は、俺がする」
「え? ああ、いや、それはお願いするんだけど、」
士郎は即座に頷く。あてがわれた役に自分は適任だと、彼は十分理解している。
遠坂家の宝石魔術は、高い威力を誇る反面、コストが非常に高い。まさに等価交換の魔術の原則を体現した魔術であり、士郎の投影はその原則に反した例外だ。終わりの見えない消耗戦ならば、凛の魔術より遙かに向いている。
ただ、その速すぎる反応に慌てて言葉が付け足された。
「――衛宮くんには時間稼ぎをして欲しいの、わたしが状況をどうにかするまで」
「――――――む、」
「えっと、姉さん、どうにかするって具体的には何をするつもりなんですか?」
困惑に押し黙る士郎の代わりに、桜が疑問を投げかける。
彼女は単純に、自分にも出来る何かを求めていた。凛の策が何かは分からないが、内容次第で桜も手助けが出来るかもしれないのだから。
期待の眼差しを受けた姉は、気まずそうに目を逸らした。
「………………、……………」
「……えっと、姉さん?」
姉らしからぬその光景に首を傾げる。
妙に歯切れの悪い。それほど話したくないものなのか、あるいは説明の難しい儀式でも執り行うのだろうか……?
結局、たっぷり一分近くも押し黙った凛は苦虫を噛み潰した顔で呻いた。
「…………そう、何をするか。何をすればいいのか、それさえ考えつけば、あんな白いの簡単に片付くのに……ッ!」
わしわしと頭をかき乱し、最後に深々と息を吐いた凛の目は据わっていた。
桜の手を握り、士郎に向かって開いた左手を突きつける。
「いい、士郎――街の人たちは柳洞寺に逃がしなさい、そこに結界を張っておくから。それと、深追いは禁止よ。あくまで倒すのは街に入り込んだ敵だけ、外の奴らまで刺激することはないわ」
「待て遠坂、結局何をするつもりなんだ?」
「説明がないと、流石に私も先輩も動きづらいと言うか……」
再び、重苦しい沈黙が訪れる、かと思われた。
「…………大聖杯を起動させるのよ」
「なッ!?」
「えぇ……ッ!?」
一分後、魔術師と魔術使いが行動を開始する。
――――冬木市周辺に巨大な晶柱が顕現するまで、あと二時間半。
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