西暦編
第二話 あの日A
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た異形を、凛は間一髪で回避した。
白く、口のような器官以外に目立った特徴のない外見。時計塔で、実験で生まれた合成生物は見飽きたと思っていたが、ここまで機能を単一に絞ったデザインは初めてだ。
人間より一回り以上大きな身体は僅かに浮き上がり、こちらの様子を窺っている。……さっきの様子から見て、こちらを喰うつもりでいるのだろうか。
「冗談、まっぴらお断りよ」
弾かれたように、勢いよく襲い来る白い化け物。
「―――――Anfang」
対して凛は、握っていた石の中から黒曜石を選んで放り投げる。
「Gewicht, um zuVerdoppelung――――!」
猛烈な荷重が、対象を大地に押しつぶす。
彼のギリシャの英雄すら動きを封じ込めた魔術は、未知の異形にも例外なく力を発揮する。
もがくような動きも僅かな間のみ、抵抗空しく平たく潰れた化け物はあっけなく消滅した。
「使い魔かしら。それとも幻獣が表に出てきたとか?」
首を傾げる間に、周囲に漂っていた化け物がゆっくりと距離を縮めてくる。
「なんにせよ、冬木はわたしが管理する土地――――好き勝手は許さない。徹底的に叩いて潰して、降参する意思もまとめて砕いてあげるから、覚悟なさい――――ッ!」
宝石が幾色もの軌跡を描き、緻密で暴力的な閃光が炸裂する。
二十三いた化け物は、瞬く間に十が弾けて散った。
四は炎に焼き尽くされ、三は不可視の風に切り刻まれる。
残りの六は、宝石の魔弾に貫かれて消滅した。
遠坂凛――彼女は、敵が未知の化け物だろうと萎縮するような性質ではない。刃向かう敵は一切の容赦なく叩きのめし、徹底的に事を成すのが彼女の流儀である。
五大元素使いの一流魔術師を、有象無象の化け物が止められるはずもない。
あかいあくまの蹂躙は、彼女の目的が果たされるまで続けられた。
☆ ☆ ☆ ☆
「ああ―――――ッ! いた、ようやく見つけたわよ、士郎!」
響き渡る声は、士郎も桜もよく聞き慣れたもの。
現れた遠坂凛は、二人よりいくらか落ち着いた様子で息を吐いた。
「はあ、手当たり次第に当たるつもりだったけど。近くにいたのは僥倖だわ、二人とも怪我してないわよね?」
「ああ、俺は問題ない」
「はい。私も、先輩に護っていただいたので、無事です」
二人の答えに、凛はよしと頷く。
「なら、これからの方針を決めるわ。状況だけに、あまり時間はかけられないけど」
二人の反応を確認し、凛は冷静に言葉を続ける。
「まず、侵入してきたあの白いのについてだけど、細かいことは一切分からない。ただ、数が多すぎるわね。使い魔越しに確認できただけでも、四百か、五百
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