西暦編
第二話 あの日A
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ゃない。まあ、この世全ての悪をどうにかできたのは大きいけど、協力するってんならしっかり最後までやりなさいよね!」
がぁーーッ、と気炎を吐くが後の祭り。錬金術の大家は、五年前の大聖杯解体(未遂)の際にこの世全ての悪の乖離と事後対応に協力していったが、対価として肝心の機能が破壊されている大聖杯の後始末と間桐、遠坂との縁切りを取り付けていった。なので、今さら何を言っても取り合ってくれないだろう。
もう一方の協力者であった聖堂教会は、魔術には門外漢ばかり。アインツベルンが気づけなかった見落としに遠坂が気づけなかったように、専門外である聖堂教会側に責任はないだろう。
結局、遠坂家がやる他ないという状況は変わらない。
「あーあ、面倒なことになっちゃったわね……、……あれ?」
思わずぼやいた凛だったが、突然消えた電灯に首を傾げた。
――――確か、一週間前に替えたはずだけど。
「…………敵、侵入者? けれど、結界には何の反応もない」
使い魔の情報から、停電が自宅だけではないことも把握している。
もし敵対する魔術師の攻撃ならば、ここまで無差別で大規模になる必要はない。
かといって、偶然の事故と片付けるには違和感が残る。身もふたもない言い方をするならば、彼女の中の本能が警鐘をならしている感覚。女の勘、などという言葉を昔使ったが、今の違和感はそれに近い。
外へ出て、冬木に着いているだろう士郎と合流するか。
あるいは、工房を封鎖して情報をもっと収集するか。
「……えーーい! 女は度胸よ、覚悟を決めなさい遠坂凛!」
逡巡は一瞬のこと、新たに用意していた切り札の宝石を複数ひっつかむと、凛は遠坂邸を飛び出した。
「まずは士郎ね、あいつと合流してから考える!」
大雑把だが行動方針を立て、使い魔を総動員して街を探す。
宝石魔術の使い魔は目立ちやすいという欠点はあるものの、生体と違い必要な時に込めた魔術を開放するだけで即座に使用できるという長所がある。とはいえ、宝石は消耗品であり、切迫した遠坂家の経済状況としては無駄遣いを避けたいところだが。
新都に二体、衛宮邸に一体、柳洞寺周辺に二体用意していたが、士郎の姿は見当たらない。
使い魔の捜索範囲を広げるべきかと考えるが、入れ違いになる可能性もある。
「仕方ない。こうなったら、士郎の行きそうな所をしらみ潰しに当たっていくしか、」
考えながら歩いていたせいだろう。
不意に、自分の視界に影が落ちていることに気づいた。
森の中なら、木陰だろうと気にもならないに違いない。新都でも、ビルや背の高い建物の影に踏み込んでいたなら気付くこともなかっただろう。
だが、ここは住宅街。夜空の光を遮るものなどなく、
「ちょ……、なぁ……ッ!?」
大口を開いて迫ってき
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