西暦編
第二話 あの日A
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果的に働くだろう。幾つかの問題はあるが、霊地の安定化という至上命題に対しては今の段階で思いつく課題はない。強いて言うなら、パワーバランスが崩れることを上の連中が嫌がるだろう、ということくらいか』
「……しかし、現状では魔導の衰退は避けられません。後の混乱を考慮しても、今はあらゆる手を打つべきではないでしょうか?」
『同感だ、実に下らない。ミス・遠坂、礼装の開発を進めてくれ。上の説得と事後の対応は、私が他のロードに頼み込むとしよう』
こういう時に権力争いに無縁な立場は役に立つ、と妙に自信ありげな言葉に苦笑する。
実際、凛のアイディアには問題点が存在する。
特に大きな問題は二つあり、複雑な大聖杯の仕組みの内どれが目当ての機能を担っているのか、それが単体で成り立つ仕組みなのかを調べ、簡易化した礼装を開発する必要があることが一つ。もう一つは、礼装が簡易化すればするほど、他の目的に濫用されやすくなる、ということだ。前者は今までの調査内容から分析を進められるが、後者は多様な場合が考えられるためイタチごっこになるだろう。
一番考えられるのは、分散した霊脈のマナを取り合う展開だろうか。元が一等の霊地だろうが、ほとんど何の力もない下級の霊地だろうが、ただの土地も同然の今、礼装の機能に土地のマナが影響することはそう調整しない限りあり得ない。
そうなれば、当然起こるのは取ったもの勝ちの争奪戦だ。元の霊地より多くマナを確保しているだの、低く偽装して難癖付けているだの、わざと争いを起こさせて漁夫の利を得ようとする魔術師も出てくるかもしれない。
正直、その辺りの知恵が浮かばず相談したのだが、面倒ごとをまとめて引き受けてくれるというなら渡りに船だ。この偏屈だがお人好しのロードなら、適当に投げ出さず真摯に取り組んでくれるだろう。
肩の荷がそれなりに下りた凛はさっそく礼装づくりに励むことにしたのだが、まずは大聖杯について情報を整理していかなければならない。必要な事柄が把握できていなければ、改めて調査に出なければならないのだから頭の痛い話である。
そして翌日の夜、
「…………まあ、全然足りないわよねぇ、そりゃ」
地下の工房で引きつった笑みを浮かべる、遠坂現当主の姿があった。
最も、予想はしていたのだ。元々収集していた情報は、あくまで聖杯戦争を縮小し、簡易化した模倣儀式の開発に必要なものであって、霊脈から六十年もかけて魔力を蓄積する機能など簡易化から最も遠いものだ。
寧ろ、持っていた情報を分析した結果、今の状態でも大聖杯を稼働させ得ることが分かってしまった。とんだ藪蛇である。これで調査にしろ、封印にしろ、大空洞に行かねばならない名目ができてしまったのだから。
「アインツベルンめ。何が『もう願望器としての機能は破損しておる』よ、しっかり動いてんじ
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