西暦編
第一話 あの日@
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ったが、それを許してくれるほど現実というものは甘くないらしい。
のそり、と蠢いた星もどきは、音もなく身体を浮かべると口のような器官を大きく開いた。
そして次の瞬間、士郎に向かって勢いよく襲い掛かった。
「く、ッこの……!」
眼前に迫る化け物の顎を、士郎は双剣で真正面から受け止める。
退くことはできない、後ろには桜がいる。衝撃をその場で殺しきり、動きが止まった敵に逆手に持ち替えた莫耶を突き立てる。投影品ながら確かな神秘を有した宝具は、白い身体に深々と潜り込んだ。
「抉れ……ッ!」
莫耶へ魔力を流し込み、伸びた刀身が獲物を貫き外へ抜ける。
――オーバーエッジ。
長剣を振り抜くと、化け物は断末魔を上げて消滅した。
「――桜、俺の傍から離れるなよ」
「はい、すみません……先輩」
ギュッと背中を掴む感触が伝わってくる。
桜を護り迎え撃つ決意を固めながら、士郎もまた焦っていた。
今の化け物の動きは、士郎という存在を認識して襲ってきていた。だがそれにしては、初動が緩慢に過ぎる。士郎を襲うつもりだったというより、士郎が目に入ったから飛び掛かったように思えた。
つまり、認識したものを無差別に襲う可能性があるということ。冬木の街にも多数の化け物が落下している。今頃、街中は大変な騒ぎになっているに違いない。
そして、厄介なのが化け物たちは神秘を帯びた存在だということ。サーヴァントどころか並みの魔術師と比較しても大した敵ではないが、それは士郎が投影品とはいえ宝具を扱う存在であるからだ。神秘は神秘を以てしか対抗足りえず、一般の人間には抵抗することも許されない。
「くそ、こいつら……!」
迷う暇などなく、周囲に散らばっていた化け物たちが次々に二人を喰おうと襲来する。
二体目は、莫耶で唐竹割りに断ち割った。
三体目は干将をオーバーエッジにし、薙ぎ払った。
四体目と五体目は、双剣を投擲して近づく前に屠り、壊れた幻想の余波で体勢を崩した六体目も投影し直した干将を投げつけ爆砕。
「背後です、先輩……ッ」
桜の声に、振り向きざまに切り払った逆手持ちの莫耶が、化け物を側面から貫き留める。
剣を長大化させると、跡形もなく霧散した。間桐邸付近に落ちた化け物は、今の一体で最後だったらしい。
「――ひとまず切り抜けたな。桜、怪我はないか?」
「はい……ありがとうございます、先輩」
夫婦剣を投影し直し、緊張の糸を張り詰める。
士郎にとって化け物は難敵ではないが、不意打ちを受けて切り抜けられるほど易い相手でもない。咄嗟の対応の遅れが、容易に死へと直結することなる。
「これから遠坂の所に行く。桜は、そこで避難しててくれ」
「……先輩はどうするんですか? まさか、街に落ちた
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