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勇者たちの歴史
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  ――体は剣で出来ている( I am the born of my sword )
 
 どこかの世界で、一人の男が世界と契約を果たした。
 男は非力で、どこまでも頑固だった。
 自分の力では助けられないと知りながら、それでも見ず知らずの命を救うために、差し出された呪いを掴み取ったのだ。
 世界の救済を願った男は力を得たが、死後の安寧を売り渡した。
 それでいいのだと。
 それで助けられるのなら構わないのだと、男は心底から願ったのだ。
 
 ――血潮は鉄で(Steel is my body,)心は硝子(and fire is my blood) 幾たびの戦場を( I have created over )越えて不敗(a thousand blades  )
 
 理想に裏切られ、かつての願いに絶望した男がいた。
 男は自身を誤りだと称し、世界に刻まれた自分を消滅させようと目論んだ。
 機会は、万に一つの可能性。
 奇跡のような巡りあわせと、策謀を張り巡らせた先にようやく掴めるかどうか。
 男は諦めなかった。
 ただひたすらに待ち、
 数多の戦場を駆け抜ける内に摩耗し、
 もはや自身すら定かでなくなった果てに、ようやくその好機は訪れた。
 
 ――ただの一度の( Unknown to Death )()走も/はなく(Unaware of loss  )  ――ただの一度の勝利もなし(  Nor aware of gain  )
 
 こうして、彼は剣を交えた。
 それは技量を競う闘いではなく、命を奪い合う殺し合いとも僅かに異なる。
 それは、正義と正義が鎬を削る、信念がぶつかり合う戦場だった。
 男は、自身の正義を誤りだと断じていた。
 少年は、自身の正義を間違いじゃないと胸を張った。
 どちらも、自身にとっては正しいと信じる答えだった。
 男は頑固だった。
 それは少年も同じことで、故に説得は無意味だと互いに理解していた。
 結局、男は過去の自分を『間違い』とはできず。
 少年は、その末路を知ってなお、憧れた正義を張り通した。
 戦いは終わり、千載一遇の機会は失われた。
 男はこれからも望まぬ仕事を果たすことになる。人という種が消えるその時まで。
 けれど、男はもう自分殺しなど願いはしない。
 大丈夫、と言った言葉に偽りはない。
 彼は正義の味方の信念を抱き、守護者としてあり続ける。
 
 少年は、末路を知ってなお、理想を追うと心に決めた。
 彼が進むのは、かつて男が通った道であり、けれど男とは違う先に行き着くだろう。
 彼には、赤い悪魔が付いている。
 彼女がその手を放さない限り、主従が交わした最後の誓いは果たされるだろう。
 
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