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銀河英雄伝説〜生まれ変わりのアレス〜
第五次イゼルローン要塞攻防戦6
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 一つは、追加の訓練である。
 元より練度の高いスレイヤー少将の部隊である。それ以上は他の部隊と悪い意味で差がついてしまうだろう。そのため、ある一定の練度に達すると同時に、急加速による訓練を願い出たのだ。名目としては、並行追撃をよりスムーズにするためにという説明であったが。
 それをスレイヤーは、了承して戦闘状態からの離脱という離れ業をやってのけた。

 もう一つが、戦闘中におけるエネルギーの運用だ。
 通常戦闘中であれば全力で攻撃と防御にエネルギーを振り分けるのが当然だ。そのため、加速するためにはエネルギーを一度動力機関に戻すという手間が必要であったが、乱戦状態であれば全力の攻撃も防御も無駄に終わる。そのため、半分程度を動力機関で運用してもらっていた。
 アレスは知らないことであったが、結果としてぐだぐだの乱戦となって、ラインハルトが無様と評価することになったが。

 通常の部隊であれば、綱渡りというよりも不可能に近い動きをやって見せたのは、まさしく同盟軍の精鋭ともいえるスレイヤー少将の分艦隊であったからであり、何よりも、そんな一大尉程度の戯言を信用して、行動してくれたスレイヤー少将の力でもあった。
 それらが一つでも欠けていれば、成功することはなかっただろうし、逆に言えばアレスがいなくても成功できたに違いないと思う。

 それをスレイヤーに伝えれば、スレイヤーは首を振った。
「私ならば、そんな博打はやろうともしなかっただろうし。何より敵艦隊の間を高速で駆け抜けるなどということは、君以外の誰にも不可能だ。戦術シミュレーターでも得意としていたな、突撃しながらの戦闘艇の射出は」
「所詮はシミュレーターでの話です。それに――仲間がいたからできたことです」
 悪戯げに笑んだスレイヤーに対して、アレスは行動を可能とした過去の仲間たちを振り返った。既に彼らは喜びから、現実へと戻って、それぞれの任務をこなしているのだが。

「それはいいことだな。さて……この後はどうなるかね」
「ヤン少佐が動いてくだされば、おそらくはお渡しした計画で進められると思いますが」
「ああ。そうだろうな、それで。どちらの計画になると思うかね」
 問いに対して、アレスは答えを持ってはいない。

 運のみぞというよりも。
「それは総司令官の判断次第でしょう」
「できれば正しい判断を願いたいものだ」
 正しい判断の言葉に、アレスは返答の言葉を持たず、小さく笑い、スレイヤーに敬礼をすると、静かに下がった。

 + + + 

 全滅を覚悟した状況の、朗報に沸く艦橋。
 アップルトンも喜びを浮かべつつ、しかし、前面のモニターを凝視していた。
「しかし、なぜあんな位置に」
「後退すれば間に合わない。と、すれば前面に向かうしかなかった」

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