第五次イゼルローン要塞攻防戦6
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点では誰もがイゼルローン要塞に視線を向け、後退のために意識を最前線からそらしていた。完全な隙をつかれた形となり、既にヴァルテンベルクは遠ざかる同盟軍を見ることしかできない。
「このために余力を残していたというのか、反徒どもは……おのれっ!」
憎しみを込めた叫びをあげた刹那。
巨大な光が――前線に立つ駐留艦隊ごと全てをかき消した。
+ + +
駐留艦隊の脇を駆け抜けたスレイヤー少将率いる第五艦隊第一分艦隊は、放たれようとする光の渦の脇すらも滑るように飛び込んだ。
モニターによる遮光があってもなお、眩むような光が走ったのは、まさに紙一重の瞬間。
高加速によって、敵を避けられずに激突する艦があった。
防御のエネルギーすらも最小限にしたため、敵の主砲を防ぐことができなかった艦があった。
後方にあった艦は、間に合うこともなくトールハンマーに巻き込まれた。
多くの犠牲が生まれ、それでも第一分艦隊はイゼルローン要塞の脇をすれすれに駆け抜けていく。
第一分艦隊は三割を失いながらも、多くが生き残っていた。
それが少ないとみるか、多いとみるか。
アレスは判断に迷ったが、少なくとも生き残ったと言えるだろう。
加速を強めていくモニターには、巨大なイゼルローンの外壁が映し出されていた。
静まり返った艦橋で、音が生まれた。
「生きているのか」
問い。
それはクリス・ファーガソン大佐と名乗った参謀の言葉だ。
いまだに信じられぬように、口に出した言葉に、スレイヤーが頷いた。
「ああ。賭けには勝ったようだ、みんなよくやった」
語気を強めた言葉に、喜びが生まれた。
爆発するような歓声は、途切れることがない。
隣にいる同僚と生存を喜び、抱きしめる。
ローバイクが無言で、セランの背中を叩き、セランが腰を落とした。
そのままの姿勢で呆然としたまま腰が抜けましたと、呟いて、笑いを誘う。
永遠にも続くかに思われた瞬間であったが、その時間はほんの一瞬。
スレイヤーが手を打った甲高い音が、艦橋に響いた。
「諸君。喜ぶのはわかるが、まだ早い。いまだ敵の陣地の真っただ中だ。トールハンマーが連射できるということを忘れてはいないかね」
厳しい言葉であったが、それは事実でもあった。
誰もが理解しているのだろう。
最もうるさいまでの歓声は途切れることになったが、表情のほころびまでは消すことができないようである。
「だが。見事なものだ――礼をいう」
「いえ。全ては皆の実力によるところです」
脇に置いていたベレー帽を手にして、かぶりなおしながら、アレスは口にした。
アレスはスレイヤーに、敵主砲が味方事撃つ可能性があると伝えると同時に、頼んでいたことが二つあった
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