第五次イゼルローン要塞攻防戦6
[2/6]
[8]前話 [1]次 [9]前 最後 最初 [2]次話
索敵士官の声に、もはや計器だけではなく、視界が理解させる。
イゼルローン要塞――その前方に高出力のエネルギーが集約して、まるで太陽を思わせる光の渦が存在する。その射線の先に狙うは、敵の最前線があり――そして、味方の最前線でもあった。
まだ撤退は完了していない。
いや、わずかな後退すらできていない。
数千隻にもある駐留艦隊の最前線の部隊だ。
「下がれ。前線から下がらせろ!」
もはやこの期に及んで、脅しだと希望を膨らませて発言することはできない。
先ほどの威厳すらかなぐり捨てて、ヴァルテンベルクは叫ぶように命令を下した。
それは命令ですらない悲鳴に近い声であったが、兵士たちにとっては同意見であったのだろう。光の渦が巨大になるにつれて、一刻も早く逃げるよう命令が下され、前線の艦隊は全力で後退を始めた。
そこに統制というものは存在せず、ある駆逐艦は戦艦の逆噴射に巻き込まれて炎をあげ、ある艦は自ら敵を攻撃中の主砲の斜線に入って、はじけ飛んだ。
混乱の極みの中で、イゼルローン要塞から視線を外した索敵士官の一人が声をあげた。
「閣下。敵艦隊――敵の最前線の一部の艦隊が……前進しています!」
「何を馬鹿な」
ヴァルテンベルクが顔をしかめ――視界に入ったのは同盟軍の艦隊が押し寄せている姿だった。
「ぶつかる気か」
それは驚くべき加速であった。
動力機関にある程度エネルギーを使っていなければ、戦闘中には不可能な高加速。
その速度に前線はおいていかれ、駐留艦隊総旗艦であるヴァルテンベルクの脇を駆け抜ける。
「艦隊――前面に主砲を斉射せよ」
雨の様に駐留艦隊からレーザーが降り注ぐ。
選んだのが捨て身の特効だとしても、加速状態で正面から撃たれれば、こちらにたどり着く前に壊滅できる。
降り注ぐ主砲の嵐が、敵艦隊を大きく削っていく。
だが、それにしては敵からは一切の攻撃がなかった。
いや、防御すらも最小限度にして、速度のみを優先しているようだ。
ある艦は駐留艦隊の攻撃によって沈没し、ある艦は帝国軍の艦隊に正面からぶつかってともに破壊された。
無謀ともいえる疾走に、だが、同盟軍の艦隊は止まることはない。
疾走。
走り出す艦隊が目指すのは駐留艦隊ではなく――イゼルローン要塞だ。
「敵――こちらに向かってきません。閣下!」
問われた声に、迎撃命令を出そうと考えたが、既に遅い。
敵最前線は駐留艦隊の脇を縫うようにして、イゼルローン要塞に向けて走りだしている。
主砲で迎撃するためには、艦隊の方向を変えねばならず、間に合わない。
艦隊が反転したころには、すでに背後に回り込まれているだろう。
もし、気づくのが早ければもっと対処もできた。
だが、その時
[8]前話 [1]次 [9]前 最後 最初 [2]次話
※小説と話の評価する場合はログインしてください。
[5]違反報告を行う
[6]しおりを挿む
[7]小説案内ページ
[0]目次に戻る
TOPに戻る
暁 〜小説投稿サイト〜
利用規約/プライバシーポリシー
利用マニュアル/ヘルプ/ガイドライン
お問い合わせ
2024 肥前のポチ