第十四話 災厄の少女の采配
[5/7]
[8]前話 [1]次 [9]前 最後 最初 [2]次話
口の傷は先ほどよりも出血量が増したように見える。このまま放置すれば命の危険に関わるのは明白であった。
凰香は抱き留めた天龍を地面に横たえ12cm単装砲を地面に置くと、すぐさま服の裾を破って肩と足の傷口よりも心臓に近いところに固く結びつけて止血を行う。辺りを見回した際に水が漏れていたタンクを見つけ、それを持ってきて火傷の箇所にゆっくりとかける。大方かけ終わったら、服から破った布きれに水を含ませて患部に優しく巻き付ける。
「随分……手慣れてやがる……」
「血生臭い生活を送っていましたから応急処置はお手の物です。ですが文字通り応急処置ですので、ちゃんとした治療をしてもらってください」
凰香は天龍にそう言うと、周囲を見回す。
誰か天龍を鎮守府まで連れていってもらいたいところなのだが、そう都合よく艦娘が近くにいるはzがない。
凰香が時雨を呼ぼうとした時ーーーー
「天龍ちゃん!!」
ーーーー後ろから天龍の名前を呼ぶ声が聞こえてくる。凰香が振り向くと複数の駆逐艦を連れた龍田がこちらに走ってきているのが見えた。それと同時に、頭上からブーンと言う羽音が聞こえ始めた。
どうやら鎮守府に残っていた空母達の艦載機が到着したようだ。これで敵艦載機も一方的に攻撃することはできなくなるだろう。
「提督、何でこんなところに……」
「話は後です。龍田さん、天龍を任せてもいいか? 私は他に動ける方を集めて避難を呼びかけてきます」
凰香の言葉に龍田は一瞬驚いた顔をするも、すぐさま顔を引き締めて力強く頷く。それを見た周りの駆逐艦は天龍に駆け寄り、肩を回して何とか立ち上がらせる。
それを見た凰香は地面に置いていた12cm単装砲を手に取る。
「では、よろしくお願いします」
「ま、まてよ……」
そう言って駆け出そうとした時、天龍が声をかけてきた。
振り返ると黒っぽい何かを投げ渡される。小さい割にズッシリと重いそれから、微かに人の声のようなものが聞こえてくる。
「俺の……無線機だ…そいつを使えば……指示が出せる……」
天龍がか細い声でそう言うと、周りの艦娘たちは驚いたような顔になる。天龍が凰香に無線機を渡したのがそんなに驚くことなのだろうか?
「いいのですか?」
「むしろ……てめぇが欲しいだろ? 俺が持っててもしょうがねえし……役立ててくれ。だからよ……」
そう声を漏らした天龍は痛々しいやけどが刻まれた腕をあげ、握りしめた拳を向けてきた。
「頼むぜ……『提督』……よ……」
「天龍さん!」
それだけ零すと、天龍の腕が糸が切れた人形のようにダランと垂れる。それに思わず駆け寄ろうとした時、龍田によって遮ら
[8]前話 [1]次 [9]前 最後 最初 [2]次話
※小説と話の評価する場合はログインしてください。
[5]違反報告を行う
[6]しおりを挿む
[7]小説案内ページ
[0]目次に戻る
TOPに戻る
暁 〜小説投稿サイト〜
利用規約/プライバシーポリシー
利用マニュアル/ヘルプ/ガイドライン
お問い合わせ
2024 肥前のポチ