暁 〜小説投稿サイト〜
逆さの砂時計
純粋なお遊び
合縁奇縁のコンサート 6
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を見せれば良いのに、今回もまたお礼も言わずに平然とがぶ飲みするんだろうな。バルハンベルシュティトナバール様の記憶を受け継いでいるとは到底思えない太々(ふてぶて)しさよね、まったく。手伝いたくても(物理的に)手伝えない私の身にもなってほしいわ。
 いえ、聖天女様の負担が気になるなら、私だけでも泉に留まれば良いんじゃない? って話なんだけど……
 けど…………

 「うぅーんんーー……っ にゅわあ!」

 「!? ど、どうしたの?」
 「ふぁ!? すみません、つい」
 突然頭を抱えてジタバタし始めた私に驚いた聖天女様が、薄い水色の目をまん丸にして私の顔を心配そうに覗き込んだ。
 間違っても聖天女様の顔を叩いたり蹴ったりしないように、慌てて大人しく座り直す。
 「何か悩んでる?」
 「いえ、その」
 「泉を避けてることと関係があるのかしら?」
 「うっ」
 「……私では相談相手にもならない?」
 「っそ! そんな言い方は、(ずる)い、ですっ」
 「ふふ、ごめんなさい」
 お節介な性分なのね、私。と、口元で苦笑いを浮かべながらも、それ以上の言葉を重ねようとはしない。
 ただ、何処へも移動せずに私の頭を撫で続ける。

 ずっと、撫で続ける。

 延々と、撫で続ける。

 黙々と、撫で続ける。

 ひたすら、撫で続ける。

 「…………………………分かりました。話します。話しますから、もう止めてください。気持ち良すぎて眠ってしまいそうです」
 「まぁ。私の肩で眠ったら転げ落ちてしまうわよ?」
 「分かっててやってましたよね」
 聖天女様に撫でられるのが好きな精霊は結構多くて、撫でられてる間にうっかり眠ってしまう事例も少なくない。
 撫でている張本人に、それを知らないとは言わせませんよ。
 「知ってる? 深い眠りには、心身の癒しや成長促進と程近い効果が有るのよ」
 「私の場合は全身打撲で昏倒とかになりそうです」
 「そうなる前に支えてあげるから大丈夫よ」
 「嬉しすぎて涙が出そうなお申し出ですが、別の機会にお願いします」
 「……支える事自体は断らないのね?」
 「聖天女様の手は気持ち良いので」
 「存外真面目に切り返されて、内心ちょっと照れています」
 「そんな所もお可愛らしいと思います」
 「ありがとう。褒め殺して話を逸らそうとしても、聞き耳はしっかり立ててるからね?」
 「本心ですよ」
 「……………………。」
 聖天女様の両目が右へ左へ(せわ)しく泳ぎ、頬と耳が見る見るうちに赤くなっていく。

 勝った。

 とはいえ、話しますと自分の口で言ったのだから、ちゃんと説明はするけど。
 「……アーさんの傍を離れたくないと思ってる自分がいるんです」
 「あら、恋話?」
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