第四部 冥界の英雄
英雄の再始動、寄り添う少女
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龍帝たちに接触、場合によってはそのまま交戦に入る。コンラ、ブリギッド、マルシリオ。お前たちは構成員を率いてヴァーリの足止めをしてくれ。現地でゲオルク達に会ったら協力を持ちかけてでもヴァーリを足止めしてくれると助かる。いいな」
『ハッ!』
「ブリギッド、今から転移の術式を組んだとして二時間くらいだな?…よし、では作戦は6時間後に開始だ、それまで準備をしておけよ」
余談だが、魔法の使い手でもあるブリギッドは私たちの移動を補助する転移術式を担当してもらっている。流石にゲオルクの『絶霧』には及ばないが十分に利便性はあると曹操は判断したのだ。
「撤退の合図は俺か文姫がブリギッドに伝える。その場合、いったんどこかの中継基地を経由して此処に戻ってくれ。以上だ」
一気にがやがやと賑やかになった部屋を後にする。そのまま自分の部屋に入って、ぼふりとベッドに体を投げ出す。
……赤龍帝と、か。それは全然かまわないし、そうなったらなんとか勝つつもりで入るけれど。
戦場には、赤龍帝たちだけではないかもしれない。ジークやジャンヌだっているかもしれないのだ。
もし、そうなったとき――――――私は、彼ら彼女らに刃を向けることができるのだろうか?かつては味方であった人たちを、倒すことができるのか。
「―――愚問だね」
すらりと、刀を抜く。研ぎ澄まされた刃に私の顔が映る。
見慣れた闇色の瞳には、揺らぎなんて欠片もなく。冬の湖面のように、凍てついた瞳がある。
「文姫」
どれほどの時間、そうしていたのだろうか。魅入られたように刃を凝視していた私を呼ぶ声が聞こえる。
振り返ってみれば、いつの間に来たのか曹操がそこにいた。
「どうしたの?準備はいいの?」
「ああ、俺は特にやることはないからな。―――文姫、相手は赤龍帝だけじゃない、ゲオルク達との戦闘になる可能性があるのは、分かっているよな?」
曹操の問いに頷く。今、ちょうどそのことを考えていたところだし。
「君に限って心配はしていないが―――やれるのか?」
曹操の瞳がわずかに細められ、こちらを値踏みするような光を宿す。
これは……心配、されているのだろうか。少し困惑してしまう。
でも、そんな心配、曹操自身が言った通り、いらないのに。
だって私は、あなたの剣、あなたの道具。あなたの意志に、最後まで寄り添うことを願う者。そうあれかしと、私自身が望んだ姿。
あなたがやれというのなら……神にすら刃を向けましょう。
◆◇◆◇
「―――曹操に敵対するというのなら、斬れる」
そう言い切った彼女の闇色の瞳は、思わず吸い込まれそうなほどに深く。そして冬の湖面のように静謐だった。
自分のために全てを捧げてくれる彼女なら、そう答える
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