458部分:第三十五話 プラネタリウムその十一
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だよ」
「陽太郎君の家とですか」
「凄いよな、そういうところに違いって出るんだよな」
陽太郎は素直にだ。月美の家のそうした豊かさを賞賛していた。
「俺の家ってそういうのがないからなあ」
「あの、けれど」
「けれど?」
「陽太郎君今ひがんだり羨んだりしていますか?」
月美はその温和な顔に咎めるものを含めて言ってきた。
「それは」
「ああ、それはないよ」
「ないですか」
「俺あまりそうした感情はないから」
ひがみや嫉妬はというのだ。実際に彼はそうした感情はなかった。嫉妬深くないというのは。彼の美徳の一つとも言ってもいい。
「だからただ凄いって思うだけで」
「それだけですね」
「具体的には美味いって思うだけだよ」
「それだと何よりです」
月美は陽太郎のその言葉を受けてほっとした笑顔になるのだった。
「陽太郎君がそうした感情を持っていなくて」
「そういうことは安心しておいていいから」
「はい、それじゃあ」
「このケーキだけじゃなくてコーヒーもな」
「よかったら紅茶もどうぞ」
「いや、それはいいよ」
紅茶の申し出は笑顔でやんわりと断った。
「両方はさ」
「それはいいですか」
「うん、どっちかだけでいいよ」
こうした欲を張ることもない彼だった。
「だからね」
「はい、それじゃあ」
「コーヒー。後でもう一杯貰えるかな」
彼が言うのはこのことだった。
「それいいかな」
「はい、どうぞ」
月美は陽太郎のその申し出を笑顔で受けた。
「その時は御願いしますね」
「それじゃあ。飲み終えてから」
「私ももう一杯」
「コーヒー好きなんだ」
「どちらかというと紅茶ですけれど」
それでもだというのである。月美はコーヒーも好きだったのである。
「やっぱり。紅茶も」
「そうか。それじゃあ後で二人で」
「もう一杯ですね」
にこりと笑って陽太郎に答える。そうしてなのだった。
二人は笑顔で二人の時間を過ごしていた。そうしてその仲をさらに進展させていた。二人の絆はもう誰にも邪魔できないものになっていた。
第三十五話 完
2010・12・31
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