「シリカとわたしは特別な『なかま』だそうです」
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を向けられる。ショウキもそちらにつられて見てみれば、シリカはせっせとメニューを操作していて。
「わたしも最近ですね、料理スキルを上げてみててまして……ちょっと、味見を頼めませんか?」
「それは確かにわたしにぴったりな頼みごとです。任せてください」
「……食べられるものだよな?」
「だ、大丈夫です! これなんですけど……」
味見――という意外な申し出に、気合い充分なプレミアとは正反対に、多少ながら心配なショウキではあったが。まさか食べられないものの味見を頼まれるようなことはあるまいと、希望的観測ながらもその申し出を受け入れて。そうしてシリカからおずおずと差し出されたものは――
「――肉まん?」
「はい!」
「『にくまん』……」
――何の変哲もない、肉まんだった。いや、何の変哲もないというのはあくまでリアルでの話であって、仮想世界においてはその何の変哲もなさはむしろ異質ではあった。リアルではコンビニで売っていようと、こちらではどこを探そうと売ってなどいないのだから。
「なんでまた肉まんなんだ?」
「そ、それより、試しにどうぞ! 熱々ですよ!」
「いただきます」
露骨に話題が逸らされた気がしないでもなかったショウキだが、初めて見る食べ物に瞳を輝かせたプレミアが、差し出された肉まんを受け取ったために、ショウキが受け取らないわけにもいかず。試しに匂いを嗅いでみたり、中身は本当に肉なのかと確認してみたりとしたが、特に変なものは感じられず。
「……いただきます」
観念して、真ん中で割らない派のショウキはそのまま、食べ方の分からなかったプレミアも同様に、シリカから差し出された肉まんを頬張った。
「どうですか?」
「…………普通、だな」
キラキラと目を輝かせて、ゴクリと固唾を飲み込んで感想を求めるシリカ……とピナには悪いが。口の中に感じる熱した肉汁の味は、リアルで食べられる肉まんの味をよく再現していた。ただしシリカの問いは肉まんの味を再現できているか、ではなく、美味しいかであり……となると。
「やっぱりですか?」
こういう時は嘘でも美味しいって言うもんよ、と彼女からは口を酸っぱく言われていたため、正直に話してしまって大丈夫だったかと少し不安になったショウキだったが。幸いなことにシリカも似たような感想だったようで、苦笑いとともに受け入れられた。コンビニで食べるものが美味くないなどと舌の肥えたことを言うつもりはないが、どうにも仮想世界で食べる他の料理とは何かが違う気がして、自然とショウキとシリカの目線はプレミアの方に向いていく。
「美味しいです。ですが、これはいわゆる『ぱんち力がたりない』ということだと思います」
「パンチ力……ああ」
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