第六十七話 宗教都市その五
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「いつも苦労していたぜ」
「あそこの寒さは本当に凄かったな」
久志もそこにいた時を思い出しつつ芳直に応えた。
「今思うとな」
「俺っちはあそこにずっといたんだぜ」
「僕もだよ」
剛も微笑んで言ってきた。
「あそこを長い間旅していたからね」
「北は本当に寒いよな」
「この島でもね」
「高山も相当だよ」
淳二はこう言ってきた。
「もうね、雪と風でどれだけか」
「ああ、御前アジト高山にあったしな」
「うん、アジトの中は雪も風もなくて快適だったけれど」
それでもというのだ。
「高山自体はね」
「寒いんだな」
「相当にね」
「どうもこの島は」
進太が言うことはというと。
「全体的にでござる」
「寒いか」
「東の島に比べて」
「そうなんだな」
「拙者がいた辺りにしてもでござる」
「そういえば結構寒かったな」
「そうだったでござるな」
「ああ、だから厚着なんだな」
ここで久志は自分達の服を見れば実際にそうだった。
「寒いからか」
「厚着をしていてでござるよ」
「寒さを凌いでるんだな」
「そうでござる」
「ここはそれ程でもないけれどな」
今自分達がいる場所はとだ、久志は述べた。
「全体として寒い島だな」
「その寒さたるや」
清音が言うことはというと。
「女の子泣かせよ」
「そこでそう言うか?」
「言うわ。女の子にとって冷えることは大敵よ」
まさにというのだ。
「本当にね」
「シビアな現実だな」
「シビアでもね」
「現実か」
「実際身体が冷えたらね」
「男以上に困るんだな」
「そうなのよ、これが」
優雅さと砕けた感じを併せ持つ口調での言葉だった。
「だからよ」
「女の子は余計に厚着か」
「そうしてるわ」
「ほら、よくあるでしょ」
留奈もここで久志に言ってきた。
「ファンタジーの女の子の服」
「露出高いあれかよ」
「ビキニの鎧とか水着かレオタードみたいな服とか超ミニとか」
「胸や肩も出たりな」
「そんなのはね」
到底というのだ。
「もうね」
「ないよな、実際は」
「あんな恰好でこの島の北とかにいたら」
それこそというのだ。
「一発で肺炎どころかね」
「死ぬとかかよ」
「肺膿になるわよ」
肺炎をこじらせてそうなってしまうというのだ。
「風邪なんて甘いものじゃなくて」
「肺膿ってやばいだろ」
この病気のことは久志も知っている、それで自分に言ってきた留奈に対してそれは幾ら何でもという口調で言った。
「幾ら何でも」
「死ぬわよね」
「死ぬぞ、本当に」
「確か片岡仁左衛門さんがなって」
留奈は自分達の世界での話をした、上方歌舞伎の有名な役者でここで話されているのは十五代目の人だ。
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