巻ノ百四十九 最後の戦その九
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「流石は十勇士の一人だけある」
「それは同じこと、力は衰えるものだが」
「鍛錬していれば衰えぬ」
まさにと言うのだった。
「そうであるな」
「だからであるか」
「そうだ、しかしだ」
「しかし?」
「貴殿は極意も備えておるな」
剛力は望月とがっぷり四つに組みだした、そうして互いに激しくせめぎ合いつつそれで話をするのだった。
「力の」
「修行で備えた」
これが望月の返事だった。
「それだけのこと」
「成程のう」
「その中身はあえて言わぬが」
「ふん、それを言わずともな」
まさにというのだ。
「強くなればいいだけのこと」
「中身はともかくとしてか」
「よい」
「そうか、ではそのわしと」
「今から全力でぶつからせてもらう」
「ではな」
二人で激しくぶつかり合いつつだ、両者はせめぎ合っていた。それはまさにがっぷりと四つに組んだものだった。
幸村達は城の中の庭の真ん中に出た、すると。
そこにいたのは無明だった、その無明を見て先にだった。
伊佐が出てだ、幸村に言った。
「次はです」
「お主がか」
「はい、闘い」
そうしてというのだ。
「引き受けさせて頂きます」
「そうか、ではな」
「殿は先に行かれて下さい」
「そうさせてもらうな、ここでも」
「さすれば」
こうしてだ、一行はこの時も足止めを置いてそのうえで先に進んだ。無明はその伊佐と対峙してだった。
静かな口調でだ、こう言ったのだった。
「迷わず足止めを引き受けるとは」
「思いませんでしたか」
「まさに」
己の前にいる伊佐に答えたのだった。
「躊躇なくとは」
「そうですか、しかしこのことは」
「貴殿達にとっては当然のこと」
「息をする様に」
その程度のことだというのだ。
「ですから」
「私と闘うことも」
「当然のこと、では無明殿」
錫杖を両手に持って構えそうしてだった。
伊佐はその錫杖と法力を使って無明と闘いはじめた、動と静の勝負の中で。
伊佐は締まった表情であの法力を飛ばし無明を攻めた、だが。
無明はそれをかわして言った。
「素早い、しかし」
「今の出はですね」
「私ならかわせる、私なら」
「左様でありますな」
「十二神将と半蔵様ならば」
自分も含めてというのだ。
「かわせる」
「今の法力も」
「そう、けれど」
表情のないまま言うのだった。
「この勝負油断出来ない」
「それはこちらも同じこと」
伊佐はこう返した。
「それでは」
「お互いに一歩も退かず」
「闘う、しかし貴殿は」
「死ぬつもりはありませぬ」
それは一切と言うのだった。
「全く」
「そうだね、貴殿の闘い方は死ぬそれじゃない」
「はい、我等は死ぬ時と場所は同じです」
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