巻ノ百四十九 最後の戦その八
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「惜しいのう」
「惜しいとは」
「それだけの腕の者が伊賀にいないとは」
このことを言うのだった。
「それが惜しいと思ったのじゃ」
「そうでござるか」
「うむ、しかしじゃな」
「それがしは充分以上にでござる」
「満足しておるな」
「誰よりも」
まさにというのだ。
「殿がおられるので」
「真田殿が主だから」
「充分以上にです」
「満足されておられるか」
「だからこそ今も」
「ご自身が残ってか」
「幻翁殿と大している次第」
今の様にというのだ。
「そうさせてもらっているでござる」
「貴殿は惜しくないか」
幻翁はまた幻術を繰り出した、筧の周りにこれ以上はないまでに深い霧を出したのだ。それによってだった。
彼の目を惑わそうとした、だがその霧もだった。
筧には通じず彼は幻翁の場所をその放つ術の場所から正確に把握してそのうえでそこに火の球や氷の柱、雷等を繰り出していた。幻翁は筧のその術を自身の術で打ち消して言った。
「いや、惜しいとはな」
「全くです」
「そうじゃな、真田殿は見事な方」
これ以上はないまでにというのだ。
「わしも思う、しかしな」
「幻翁殿の主はですな」
「半蔵様以外おられぬ」
こう言うのだった。
「それと同じじゃな」
「そうでありますな」
「貴殿もわしも果報者」
「お互いに」
「そしてその真田殿の為にじゃな」
「今も闘いまする」
「わかった、ではな」
それではとだ、こう言ってだった。
幻翁はさらに術を繰り出した、今の幻術で駄目ならこの幻術ではどうかとだ。彼は次から次に術を繰り出していた。筧はその彼と互角の勝負を繰り広げていた。
城の櫓の前でだった、そこでまた一人出て来た。今度は。
「伊賀十二神将の一人剛力」
「貴殿もか」
「真田殿を通すなと言われ」
そしてと言うのだった。
「参上しました」
「通るなと言われても聞けぬ時もある」
幸村は剛力にこう返した。
「それ故に」
「ここは」
「通らせてもらう」
「では殿、今度は」
望月が出て言ってきた。
「それがしがです」
「引き受けてくれるか」
「はい」
こう幸村に答えた。
「そうさせて頂きます」
「力には力じゃな」
「ですから」
その大柄な身体でだ、望月は笑って応えた。
「ここはお任せあれ」
「わかった、ではな」
「はい、先に行って下さい」
「それではな」
こうしてだった、今度は望月が足止めになってだった。一行を先に行かせた。そうして望月は剛力との勝負に入った。
両者は激しい死闘に入った、その中でだった。
剛力は望月の凄まじい拳や張り手を真っ向から受けて立ち自らも攻めを加えつつそうして言うのだった。
「わしと力で互角に渡り合うとはな」
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