第三章
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「スナイパーみたいな目を使う仕事はな」
「出来ないからですか」
「だからな」
それでというのだ。
「兵種替えになるんだよ」
「そうですか」
「手術受けて退院して」
「その後は」
「衛生兵だよ」
この兵種になるというのだ。
「そうなるからこの銃はな」
「どうなります?」
「さてな、けれど他にいいスナイパーがいたらな」
その時はというのだ。
「そいつに使って欲しいな」
「そうですか」
「これだって思う奴にあたしが渡したいな、それであたしが病院にいる間な」
その網膜剥離の手術の間というのだ。
「銃預かってくれるか」
「先輩の銃を」
「ああ、そうしてくれるか?」
「わかりました」
由紀はその先輩の言葉に頷いた、そしてその銃を受け取ったがこの時にだ。
先輩とのやり取りが心に残った、そのうえで。
どの兵種になるかを決めた、そして。
退院した先輩、これからは衛生兵になるその先輩に狙撃兵になることを伝えた。すると先輩は由紀に笑って言った。
「じゃあその銃受け取ってくれ」
「そうしていいんですね」
「ああ、もうあたしは使わないからな」
狙撃兵でなくなったからだというのだ。
「だからな」
「そうですか、それじゃあ」
「ああ、大事に使ってくれよ」
「わかりました」
由紀は先輩に頷いて応えた、そうして狙撃兵として戦場に出たが。
最初の仕事が終わった時にだ、戦争ではよくある話を聞いた。
「先輩が!?」
「ええ、勤務しておられた病院が爆撃受けて」
「敵の誤爆だったらしいわ」
「すぐそこに基地があったし」
「間違えて病院も爆撃受けて」
基地と一緒にそうなったというのだ、病院への攻撃は国際法違反だが戦争では残念ながらままにしてあることだ。
「それでね」
「先輩もなのよ」
「病院が崩れて」
「瓦礫の下敷きになって」
「いい人だったのに」
由紀は肩を落として残念がった、もうこの頃から人の死に鈍くなっていて泣かなかったが悲しく思うことは変わらなかった。
そしてだ、先輩から貰って銃にだ。
先輩との絆を見た、それでだったのだ。
由紀は今も狙撃兵でいた、敵をひたすら撃っていた。今戦っている相手は先輩のいた病院を爆撃した軍ではなかった。
だがそれでも戦っていた、先輩と同じ狙撃兵として。先輩の様に戦いたい先輩の銃を使っていたいと思い。
由紀はこの度の戦闘でも功績を挙げた、十五人の敵兵を撃ち殺しこのことも称賛された。だがその称賛には無反応で。
親しい友人達にだ、こう言った。
「戦争が終わったら最初に行きたいところがあるわ」
「何処なの?」
「何処に行きたいの?」
「お墓。そこに行きたいわ」
そこにというのだ。
「最初はね」
「お墓参り?」
「それに
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