7. 余煙
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―相棒とか言ってますけど……
木曾さん、きっと徳永さんにカッコよくなってもらいたいんですよ
だから隊長、徳永さんに命令を!
「あのアホ……」
「すぐにピンときた。……それに、徳永さんが鎮守府を去ってから、時々キソーが言ってたんだ」
「……?」
「さっきの生き残る執念に通じるんだけど……『生き残らなきゃいけない』『相棒がちゃんと約束を守ってたら、俺は生きて軍を退役しなきゃいけない』てさ」
「……ッ」
「だからキミには……徳永さんには、彼女の死は伝えなければならないと思った」
――徳永さん 木曾さんを守れなくてごめんなさい
タバコの煙が目に染みる。久々の煙はとても目に痛く、目から涙が止まらない。作業服の袖口で右目を強く拭くが、涙は一向に止まらない。
「……クソッ」
「徳永さん……」
提督さんの言葉の端々に紛れて、聞こえるはずのない、まるゆの声がずっと聞こえている。しょぼくれた声で、木曾を守れなかったことを、俺に必死に謝っているようだった。
「提督さん」
「ん?」
「木曾がかばったやつは……姉妹艦とやらは、無事なんすか」
「……」
「あいつがかばったやつは……あいつが……俺の相棒が身代わりに沈んだそいつは」
「大丈夫だ。キソーが沈んだ時はずいぶん動揺したが、今はもう落ち着いてる」
なぁ相棒。よかったな。
お前が助けたやつは無事だってよ。俺との約束を破ってまで助けたそいつは、無事だってさ。
でもな……一つだけだ。一つだけ文句を言わせろ。
「相棒残して……行くなよ……ッ!」
「……」
「俺が約束守ってたか、確かめるんじゃなかったのか……ッ」
「……」
――ごめんなさい 本当にごめんなさい徳永さん
「まるゆだって泣いてるだろうが……自分は悪くないのに、必死に俺に謝ってるじゃねえか……」
なぁ。戻れよ木曾。
そして続きをしようぜ。
約束を破ったことは、この際許してやるよ。俺だって今、こうしてお前との約束破って、お前に止められたタバコをバカスカ吸ってるんだ。許してやるよ。
だから戻れよ。今からでも遅くないから。そして俺が約束守ったか、キスして確認してくれ。そして怒れよ。また『タバコくせぇ』って言って、俺に怒れよ。
根本まで吸った二本目のタバコを、テーブルの上の灰皿に投げ入れた。暫くの間立ち上っていた細い煙は、やがて静かにフッと途切れた。
吐き気と嗚咽で顔を歪ませながら、俺は三本目のタバコを咥え、そして吸った。
今日はもう仕事を出来る状態じゃない……部長にそう判断された俺は、業務命令として帰宅を命じられた。そのまま帰り支度を済ませ、タバコの吸い過ぎで頭痛が酷い頭を抱え、俺は職場を後にした。
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