第五次イゼルローン要塞攻防戦5
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ることはできない。
だが、前ならば。
艦隊の速度は、戦闘態勢ではなければ平均時速で五千万キロを超えている。
それは広い宇宙では決して早いものではなく、遠い場所に行くならばワープ航法を使わなければならない。だが、わずか直径六十キロ程度の人工物であるのならば、一瞬で遠ざかることも可能な速度。
むろん、戦闘態勢から全力移動には大きな時間はかかる。
そのためスレイヤー少将は、そして前線の艦隊は無理をしてきた。
敵の攻撃に対して無様とも呼べる戦いであったのが、その理由だ。
本来であれば、敵を包むように押し込むことも可能であった。
だが、攻撃や防御に対するエネルギーを最小限に抑え、移動用にエネルギーを残している。
アレスの無茶な願いを信じてくれた、スレイヤーには頭があがらない。
でも、だからこそ。
一点に力を集約するため、イゼルローン要塞の前方にはわずかな射線の空白。
防御も攻撃も無視した加速への移行。
そして、敵もまた混乱してこちらに対して攻勢をかけられないこと。
それらの要因が、成功へと導かれる。
賭けではあるのは間違いないが。
だが。
「全艦隊、前へ――敵をぶち抜いて、進軍せよ!」
力強いアレスの命令が、全艦隊に伝達された。
要塞主砲――砲撃まで、残一分。
+ + +
光の帯が、宇宙を切り裂いた。
目が眩むような光は、すぐに遮光機能によって抑えられるが、それでも映るのは白い光。
幾千隻もの戦艦は光の激流に飲み込まれ、消えていった。
「……て、てき。トールハンマーを発射」
呆然とした索敵士官の声が、その事実を告げていた。
先ほどまで脅しだと騒いでいたビロライネンは、開いた口をそのままにして、その現状を見ていた。それまで雲霞のように広がっていた戦艦の光が、貫かれた光の場所だけ真っ暗なものへと景色を変えている。
敵も味方も、等しく存在すら許されない状況に、誰もが呼吸すら忘れて、モニターを凝視している。
「被害を報告せよ」
「は。第四艦隊――第二分艦隊の一部。第八艦隊、第三分艦隊の一部、第五艦隊第二分艦隊の一部が消失」
あげられる船籍の数は、既に千を超えている。
それでも一部という言葉は、逃げ延びたという事であるのだろう。
早急な後退命令が功を奏したともいえるが、だが、それは後方で待機するのに余裕があった艦隊だけだ。
「第五艦隊第一分艦隊――スレイヤー少将は」
「は。それは、現在確認中です」
言葉も少なげに、索敵士官の一人が苦い声を出した。
現実を知りたくなかったため、あえて見なかったのだろう。
だが、それもわずかな遅延にすぎない。
端末を操作して――目が開かれた。
「第五艦隊第一分艦隊
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