第五次イゼルローン要塞攻防戦5
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めたが、それができるかどうか冷静に考えれば、今回の状況では難しいと判断したことが間違えではないと、ワイドボーンにも理解ができたからだ。
最も何もしなかったことには変わりがないが。
感情を殺したよう謝罪の言葉をヤンにかければ、ヤンは苦く顔をしかめながら、大丈夫だと言葉にした。
それ以上は言葉には出来ず、鼻息を荒くして、再び腕を組めば、ワイドボーンは怒りの表情を残したままに前方を睨んだ。
「良いでしょう。この怒りは奴が戻って来た時に取っておきます」
だから。死ぬなよと。
ワイドボーンの呟いた言葉に、ヤンとパトリチェフが顔を見合わせて、苦笑する。
可哀そうにと。
要塞主砲――砲撃まで、残り三分。
+ + +
「要塞主砲――エネルギー充填を開始しました」
悲鳴のような声は、どこからも上がっていた。
第五艦隊分艦隊旗艦ゴールドラッシュの艦橋でも、だ。
走り回り、せわしなく端末を叩いていた人間たちが、動きを止める。
絶望に染まる視界の中で、たたずむのはイゼルローンの墓標だ。
宇宙の中で変わらぬ黒が、そこにはあった。
「総旗艦ヘクトルから暗号通信。全艦隊、即座に戦闘をやめて後退せよ!」
呟かれたアレスの言葉と、通信士官の言葉は同時だ。
「逃げろ――というのか、だが、どこに」
呻くような言葉は、分艦隊主任参謀のものだ。
その嘆きは誰もが、事実を理解していた。
敵陣深く、最前線にいるスレイヤー艦隊に逃げる場所などどこにもないのだと。
セランの手から、報告の束が落ちた。
それをとがめる人はいない。
視線が集中するのは、緩やかに光りだすイゼルローンの姿だ。
蓄えられたエネルギーが、光となって目視できるまでになっている。
その鈍くなった動作は、戦場においては致命的な隙であったのだろう。
だが、この事態に動揺しているのは同盟軍だけではない。
相対する帝国軍もまた、動きに動揺を隠せていない。
互いの攻撃は未だに続いているが、それは惰性のようなものだ。
狙いも何もなく、ただ撃っているだけというもの。
むしろ、帝国軍は逃げるように陣形すら考えずに動き始めている。
背後にいる同盟軍もまた同様であったが。
スレイヤーの艦隊が動けないのは、理解しているからだ。
下がったところで、敵の主砲からは逃れられない。
「この上は敵を少しでも叩きますか。今なら叩き放題です」
「それもいいが。上はそこまで間抜けではないと思いたいな――マクワイルド大尉」
「はっ」
身近な返答に、ベレー帽をした金髪の少年が前に出た。
「上はなんと」
「先ほどの報告と同様です。全艦隊、後退せよと」
アレスの言葉に、周囲が苦い顔をした。
わかって
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