446部分:第三十四話 夜空にあるものその十
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第三十四話 夜空にあるものその十
「だから行こう」
「うん、それじゃあね」
デートの話は決まった。それが決まった時にだった。
電車が来た。ライトグリーンの車両の中もまた白く照らされている。駅も電車の中もだ。暗がりの中に。白い光の世界があった。
二人はその白い世界からまた別の白い世界に入った。そのうえでだ。
電車の空いている席に二人で横に並んで座ってだった。話をするのだった。今度は赤瀬からだ。その独特の低い声で話すのだった。
「ねえ」
「何?」
「僕こうして二人でいるのって」
「信じられないの」
「うん、出会いってわからないよね」
こう椎名に話すのだった。
「それってね」
「そうね。それは確かにね」
「若しかしたら僕達こうして一緒にいなかったかも知れないだね」
「その通りね」
赤瀬の今の言葉にだ。言葉だけで頷くのだった。
「それはね」
「そうだよね。出会いって本当に不思議だよね」
「そう思う」
「不思議で。偶然だけれど」
赤瀬はその言葉をさらに続けていく。
「だけれど必然だったように思えるね」
「多分出会いって」
椎名はだ。赤瀬のその言葉に応えて述べた。
「人の力でなってるものじゃない」
「じゃあ神様かな」
「多分。はっきりと断言はできないけれど」
「それでもなんだね」
「そう。思わぬ人と思わぬ場所で会ってそれが大きなものになる」
そうしたことが実際にあるからこそ。そしてそのことを知っているからこそ。椎名は今こう言うのだった。
「だからそれは」
「人の力じゃなくて」
「多分」
またこう言ってからだった。同じ言葉を繰り返した。
「神様の力」
「神様なんだ」
「そう、神様がそうさせている」
椎名はこの存在をだ。何度も話に出してみせるのだった。
「人と人をそうして」
「そうしてなんだね」
「巡り合わせて結び付けていく」
それは人の力ではできないとだ。話していってであった。
赤瀬にも顔を向ける。それで彼にも話した。
「だから私も今こうして」
「僕とって。言ってくれるかな」
「うん」
その通りだというのであった。
「そういうこと。二人一緒にいられる」
「神様のお陰でなんだ」
「赤瀬だけでなくて」
「僕だけじゃなくて」
「赤瀬は第一」
まず彼があるということは確かなものにする。そうしてだった。
さらにだった。椎名は話していくのだった。
「けれどそれと」
「それと?」
「つきぴーもそう」
次に名前を出したのは彼女だった。
「つきぴーも第一」
「第一が二つ?」
「そう、二つ」
そのことを否定せずにだ。話してみせるのだった。しかも自然にだ。話していってそれでだ。そこに深いものも含ませていた。
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