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般若の面
第四章

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「その様に」
「それはいいけれどな」
「着物はともかくそのお面はどうしてなんだ」
 警部は彼にあらためてこのことを問うた。
「般若の面なんだ」
「実は私人見知りでして」
「人見知り?」
「お客さんは平気ですが外に出ますと」
「人が怖いか」
「ですから」 
 それでというのだ。
「外出、夜の散歩の時はです」
「お面を被ってか」
「外を歩いています」
 そうしているというのだ。
「そうしています」
「そうだったのか」
「駄目でしょうか」
「いい筈がないだろう」
 警部は彼に即座に呆れた顔で返した。
「そんな恰好は」
「ですが私は人見知りで」
「もっと普通の格好をしてくれ」
「普通のですか」
「そんなお面被って夜の街を歩いたらな」
 それこそというのだ。
「誰だって何かと思うぞ」
「だからですか」
「ああ、普通の恰好でいてくれ」
 こう言うのだった、そして西院宮にさらに注意したうえで彼の面を外させたがそこから出て来た顔は中々の美男子だったので余計に驚いた。
 警部は次の日署長にこのことを報告して騒動は無事に解決した、しかし数日後警部はまた署長に言われた。
「今度はですか」
「ああ、着物を着てだ」
 このことは前回と同じであった。
「そして鉄仮面を被ったな」
「不審者が夜の街を歩いているんですね」
「そうだ、多分というか絶対な」
「あの古物商ですね」
「そうだろうな、だからな」
「今度はもう本人の家に行ってきます」
 その店にというのだ。
「そうしてです」
「本人に注意するな」
「今度はそうします」
「そうしてくれ、幾ら犯罪でなくてもな」
「おかしな恰好で街を歩かれると」
「流石に騒動になるからな」
「わかっています、それでは」
 警部は署長に敬礼をして応えた、そしてだった。
 彼は西院宮の家に行って実際に彼に注意した、そのうえで今度は彼に注意した。騒動は解決したが西院宮自身の人見知りはまだ解決しないので続くのだった。


般若の面   完


                  2018・8・18
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