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整備員の約束
6. 香煙
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 まるゆが轟沈して数週間経った頃、俺と木曾のたまり場だった小料理屋『鳳翔』は閉店して取り壊された。さらなる経費削減のため、まず削りやすい福利厚生から削減していけという、司令部からの厳命だったらしい。小料理屋が取り壊された時、俺も足を運んでその場を見学したが、それを眺める提督さんの目には、涙とともに悔しさみたいなものが浮かんでいるように見えた。

 そんな提督さんに追い打ちをかけるように、施設内美容院も閉店した。こっちは司令部からの命令ではなく、切り盛りしていたあの美容師さんが退職するからだという話を聞いた。なんでも、仲が良かった神通が轟沈し、完全に意気消沈したんだとか。この鎮守府も、俺が来た頃に比べると目に見えて寂れてきている。

 そしてそれは、整備班も変わらない。この頃になると整備班は俺一人になっていて、仕事の量も俺だけでなんとか回るぐらいに減ってきていた。それだけ艦娘が沈んだということを考えると、なんとも胸に痛い事実だが……

 そんなある日の夕方。珍しく俺は提督さんから呼ばれ、執務室へと足を伸ばした。提督さんの執務室は、豪華な机や年代物のソファが所狭しと並んでいる。だが、それらはまったく手入れがなされてない。その様が、この鎮守府がいかに苦しい状況に追い込まれているのかを物語っていた。

「XX鎮守府整備班所属、徳永吾郎」
「はい」
「明後日より□□鎮守府への異動を命ず。……早急に荷物をまとめ、□□鎮守府へと移動し、合流されたし」

 提督さんから執務室に呼ばれた時点で覚悟はしていたが……やはり直接聞かされるとショックが計り知れない。俺に、この鎮守府から出ていけという辞令が下された。

 この時、俺の頭の中に浮かんだもの……それは、あの日ただ無心にポテトチップスを食べていた、木曾の横顔だった。

「……ずいぶん突然じゃねーか」
「ああ……そうだな」
「そうだなじゃねーよ。お前ら頭おかしいだろ。艤装の整備どうするんだ」
「返す言葉もない……」

 俺の追求に対し、提督さんは自分の椅子に座ったまま俯いた。深く帽子をかぶり直し、自分の表情が俺から見えないようにしている。

 俺は俺でひとしきり落ち着いた後、今度は言いしれない怒りが湧き上がってきた。ここが禁煙であることも厭わず、ポケットからライターとタバコのソフトケースを取り出し、それを口に咥えて火をつけた。

「ここは禁煙だよ」
「うるせぇ。そっちのテーブルの上に灰皿あるだろうが」
「あれは来客用兼お偉いさん用だよ」
「黙れクソッタレ。だったら実質禁煙じゃねぇじゃねーか」

 提督さんは静かに俺を諌めるが、俺はタバコを吸うのを止めない。口からバカスカと煙を吐き出し、執務室の中にタバコの煙が充満した。提督さんは恐らく喫煙者では無いと思うが……むせるこ
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