6. 香煙
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している間も、木曾は俺をジッと見ていた。
……なぁ。お前、今何を考えてるんだ?
そんなに真剣に、一体何を見てるんだ? 今、お前の目には何が映ってるんだ? 艤装か? 艤装が心配なのか? 最後の調整だからって、俺が手を抜くとでも思ってるのか?
それとも……。
できるだけ頭の雑念を振り払い、艤装の調整に専念することにする。
その間木曾は、何も言わず、ただじっと、俺の顔を見つめ続けていた。
そうして普段の倍ぐらいの時間をかけ、丁寧に丁寧に艤装の調整を終わらせた。
「木曾、つけてみろ」
「ああ」
俺も手伝い、ひとつずつ、木曾の身体に艤装を装着してやる。足に取り付ける主機は自分でつけさせたあと、背中の艤装を装着する手助けをしてやる。
艤装を持ち上げて待っている間、こいつの首筋が視界に入った。
「……」
「……あ? なんだよ徳永」
「いや……なんでもない」
こいつの緑の髪の合間から見える首筋が、細く、白い。こいつが女であるという事実を俺に突きつけてくる。自然と顔をそむけ、艤装装着の手伝いを続ける。
その後、足への魚雷発射管の取り付けも手伝い、木曾の艤装の取り付けが全て終わった。
「ありがと徳永。……おら」
「ん?」
足への艤装の取り付けのため、片膝をついていた俺に、木曾が細く、白い手を伸ばしていた。
「ありがと木曾」
「お互い様だ。お前が装着を手伝ってくれて、俺も助かったしな」
こいつの手を握る。こいつが伸ばした手はひんやりと冷たく、そしてきめ細かく手触りが良い。偶然目に入ったこいつの腹は、磨き上げられた大理石のように白く綺麗だ。
「よっ」
木曾が俺の手を勢いよく引っ張った。そのおかげで俺は勢いをつけて立ち上がってしまい……
「ぉお!?」
「ほっ」
勢い余って、立ち上がった途端に前につんのめりそうになった。木曾が俺を抱きとめてくれたからよかったが、これが木曾じゃなかったら、俺は目の前の女とともに、背後に倒れていただろう。
「……す、すまん」
「しっかりしろよ相棒」
そう言って、木曾はニッと笑う。いつもの笑顔が鼻先数センチにまで、近づく。
「なんだよ?」
「……いや」
木曾の吐息のぬくもりを、唇に感じた。多分こいつも、俺の吐息を感じている。色気はないが、綺麗に色づいたその唇に。
「……」
「……」
互いの頬が触れるか触れないかのそばで、木曾の瞳と目が合った。
初めて気付いた。曇りのない水晶のように澄んでいるこいつの瞳は、薄いグリーンを帯びていた。
「……」
「……」
「……そうかい」
俺の返答が何か気に入らなかったのか……少し沈んだ声で相槌
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