6. 香煙
[2/8]
[8]前話 [1]次 [9]前 最後 最初 [2]次話
ともせず、またそれ以上、俺を制止することもなかった。
「ここの整備班は俺で最後だぞ。わかってんのか」
「分かってる」
「俺がいなくなった後、艤装の整備はどうするんだよ」
「……」
「妖精たちもいないだろ。ここに艤装の整備が出来るやつなんて、他にいるのか?」
「……彼女たちに、整備させる予定だ」
歯切れの悪い提督さんの返答に、虫酸が走る。艤装の整備なんて、素人が生半可に出来ることではない。それなのに素人のあいつらにやらせたら……それこそ不十分な整備で轟沈が頻発するなんて、分かりきってることだろうに……そんなこと、この提督さんも分かっているだろう。
……だが、提督さんは悪くないことは、俺も分かっている。この人はここで働くやつらのことを第一に考える人だし、少なくともこんな酷い事態に鎮守府を追い込もうとするような、頭の悪いクソッタレ共とは違う。
「……それが無理なら、別の整備班を早急に準備する」
「出来るのか。アンタにそんなこと」
「……」
押し黙る。本来なら、提督といえばある程度の人事権は認められているはずなのに、この人はそれすら認められてないのか……上から相当に嫌われているのか。この人の性格を考えると、ある程度は想像はつくが……。
「……徳永さん。すまない」
「あ?」
「本来なら俺が止めなきゃならない事態だが……それが出来なかった。俺の力不足だ」
「……いいよ。あんたが悪くないことは分かってる」
「……」
「猛烈にムカついてるけどな。あんたじゃなくて、これをやったクソどもにだが」
「……」
タバコの火が根本まで来た。最後にひと吸いしたあと、部屋の奥にあるテーブルまで歩き、そこにある大理石の灰皿にそれを押し付ける。この汚れきった執務室の中で、妙にピカピカと輝くそれが、俺の神経を逆撫でした。
「……徳永さん、今日中に荷物をまとめて出発してくれ。次の鎮守府でも元気で」
「うるせえよ」
おかげで、恐らく一番の被害者であるはずの提督さんにも、俺はキツい言葉をぶつけてしまう。
「……すまないが、出る時にもう一度こっちに顔を出してくれ。異動に必要な書類がまだ出来てないんだ。準備しておくから」
「いらねえよ。んなもん直接先方に送れ」
「……わかった。□□鎮守府に直接送るよ。徳永さんは向こうでそれを受け取っ……」
「うるせえ」
「……」
苛立ちを抑えられない俺からの八つ当たりにも、提督さんは困ったように、苦笑いを浮かべるだけだった。自分と同じように、司令部のクソさ加減に怒りを顕にする俺に、シンパシーのようなものを感じていたのかもしれない。
苦笑いをしながら俺の扱いに困り果てた様子の提督さんだったが……何かを思い出したように手をポンと叩いた後、提督さんの顔は晴れ
[8]前話 [1]次 [9]前 最後 最初 [2]次話
※小説と話の評価する場合はログインしてください。
[5]違反報告を行う
[6]しおりを挿む
[7]小説案内ページ
[0]目次に戻る
TOPに戻る
暁 〜小説投稿サイト〜
利用規約/プライバシーポリシー
利用マニュアル/ヘルプ/ガイドライン
お問い合わせ
2024 肥前のポチ