第六話 都への道その七
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「人はあらゆる望みが適うか」
「それは、ですな」
「やはりそういうものではないのであろう」
「左様ですか、やはり」
「当家はあっという間に天下人と言われるまでになった」
天下の三分の一近くの二十国以上を領有してだ。
「官位も権威も得てな」
「はい、思わぬことです」
「そして我等もじゃ」
「今やそれがし達は万石取り」
「夢の様じゃ、だからな」
それでというのだ。
「我等はな」
「もう、ですか」
「そうじゃ、これ以上はないまでに得ておる」
「そうなっているからですか」
「うむ、子までとなると」
「流石に」
「得られるかどうか」
「それはですか」
「わしはどうじゃ」
それこそと言った柴田だった。
「織田家の家臣衆の中でもな」
「はい、名門かどうかですか」
「違う、しかし織田家の宿老の一人じゃ」
「殿にもよく頼りにされていますな」
「攻めはまずわしじゃと言ってもらえるまでにな」
「それで万石取りとなり官位もですか」
「貰っておる、この様に立派な屋敷に城も任されておる」
そこまでいけばというのだ。
「それではな」
「もう望むことはですか」
「ない」
そうだと言うのだった。
「だからな」
「子まではと」
「そうも思うが」
「ではそれがしなぞは」
羽柴は柴田のその話を聞いて言った。
「百姓の倅、そこから万石取りで官位に屋敷に城と」
「わし以上じゃな」
「それでは」
「子はというか」
「そう思いましたが」
「そうやも知れぬとも思うが」
それでもと言った柴田だった、その羽柴に。
「しかしな」
「それでもですか」
「それでお主も満足出来るか」
「いえ、それがしはどうしても」
羽柴はその小柄な身体を前に出して柴田に言った、織田家でも随一と言っていい大柄な身体を誇る柴田から見ると実に小さい。その小さな身体で言うのだった。
「やはり」
「わしも同じじゃ、どうしてもな」
「お子はですな」
「欲しい、それでじゃ」
だからだというのだった。
「願っておる」
「やはりそうですか」
「だからお主もな」
「子はですな」
「誰でも子は欲しいであろう」
これが柴田の考えだった。
「だからな」
「そういえば柴田殿は子供が好きですな」
「好きじゃ、どの様な者の子でもな」
それこそと言うのだった。
「わしは大事にしたい」
「それが柴田殿のお考えですな」
「そうじゃ、そう考えておる」
「左様ですか、だからこそ」
「わしも子は欲しい」
是非にと言うのだった。
「そう願っておる」
「ですな、では」
「お互いにな」
「子が出来る様に願っていきましょう」
「それではな、それで茶じゃが」
ここで柴田は羽柴にそちらのことを尋ねた。
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