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魔弾の王と戦姫〜獅子と黒竜の輪廻曲〜
第25話『ゼノブレイドを求めて〜独立交易自由都市へ』
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ったのかもしれぬ。そういった意味では、アルサスの民となんら変わらぬ。だが――」

沈痛な面持ちで語るマスハスは、リムとは対照的に凱と顔をそらしている。

「ティッタは変わった。わしらの想像をはるかに超える勇者として生まれ変わっておった。ガイ殿……おぬしは……」

それ以上語るのがつらいのか、どうも言葉がうまく出てこない。対して凱は――

「俺は何も変わっていません。「前を向こうとしているあなたたち」と同じく」

怖い気持ちを乗り越える勇気ある人ですよ。あなた方は。
俺なんかよりも……ずっと。
マスハス卿、リムアリーシャさん、ルーリック、ジェラール……フィグネリア……
そして――ティッタ。

「きっと、ティッタだって何も変わってないと思います。それが――本来のティッタなんかじゃないかって……本人はあまり自覚ないようですけどね」

恐怖。乗り越えて勇気。そして前進。
ハツカネズミのようにぐるぐる考えて迷って、未来へ進んでいくしかないとしても――。

まだやれることはたくさんある。
明るい表情のまま、凱はみんなに言葉を届ける。

「……ガイ殿」「ガイさん……」「ガイ……」
「もう一度いうよ。大丈夫。俺はもう負けないよ。絶対に!何があっても!」

なんてことない、誓いの言葉。
だが、それはマスハスの涙腺を破壊するに十分な威力を秘めていた。
伝えたい決意がある。
覇気に押され、勇気に打たれ、健気な凱の想いにリムアリーシャ達は心を打たれた。
そして、先ほどから別に考えていたことを、凱は若干ためらいがちに語る。

「俺はいったん独立交易自由都市(ハウスマン)へ戻る」
「ハウスマン?」

フィーネの疑問符は当然だった。

独立交易自由都市――世界地図の概念を保有する国家なら、そこはブリューヌを東西経度0度とすると、ハウスマンはおよそ西経73度となる。現代地球の知識で照らし合わせれば、イギリス内ロンドンのグリニッジ天文台と、アメリカのニューヨークの立ち位置を思い浮かべればわかるだろう。
しかし、ブリューヌをはじめとした西洋勢力は牽制時代の最中であり、一部の人間を除けば、大陸内の政情対応で外の世界は無関心であった。
傭兵稼業で世情に詳しいフィーネも、ハウスマンの存在までは知らないのも無理はない。
かつて、ヴィッサリオンの古巣だったことも。

「……俺が世話になった自由交易都市だ。そこへ行って、アリファールを打ち直してもらおうと思っている」
「どこにあるのですか?」

リムは凱に尋ねた。

「ずっと―――ここからずっと東にある大陸だよ。俺はそこからここ、長い洞窟を抜けてアルサスへ来た。洞窟を抜けた先にちょうどアルサスがあって、ティッタと出会ったんだ」

「そう、だったのですか」


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