5. 残煙
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、いつもよりも美味しく感じる。ポテトチップスと牛乳は合う。……目の前で何度も見てきたはずなのに、そんなことに、今更気づいた。
「……うまいな」
「だろ。俺も今日気付いた」
「お前もかよ。まるゆと付き合い長かったくせに……」
「ああ。付き合い長かったくせにな。あいつがこんな美味い組み合わせを知ってたってのは知らなかった」
「……」
「あいつのこと、何も知らなかったんだな俺は……」
「んなことはないだろ」
「……」
俺の言葉に返事をせず、木曾は再びポテトチップスに手を伸ばし、それを口に運んでバリバリと食べ始めた。そして喉を通す前に再び手を伸ばし、口に運ぶ。
俺も同じく、大皿のポテトチップスに手を伸ばした。今度は数枚一気に鷲掴みで手に取り、それをまとめて口に運んだ。店内に響く音は、俺と木曾がポテトチップスを噛み砕くパリパリという音だけだ。
「キソー、まだ食べるか?」
「ああ頼む。いつもと同じ量で」
「わかった」
提督さんが気を利かせ、さらにポテトチップスを揚げていく。シュワシュワと油の音が鳴り響き、その間にもパリパリという咀嚼音は止まらない。
「……」
木曾の手は止まらない。俺の手も止まらない。やがて大皿の上のポテトチップスがなくなった頃、俺達の前には新たな大皿が代わりに置かれた。まだジジジという音が鳴り止まない、揚げたてのポテトチップス。少し塩が多めに振られた、あの小僧が……まるゆが大好きだったメニュー。
「……なぁ徳永」
「あ?」
そんな揚げたてのポテトチップスをジッと眺めながら、木曾は口を開いた。相変わらず木曾はこちらに顔を向けない。おかげで眼帯のせいもあって、木曾の表情は読めない。
「俺は、あいつがこんなうまいものを好んでいたことすら、知らなかった」
「……」
「そんな俺だが……俺は、あいつにとって良い相棒だったのかな」
「知らねぇ。本人に聞け」
「聞けねぇからお前に聞いてんだろうが」
表情が読めないまま、再び木曾はポテトチップスの山に手を伸ばした。鷲掴みされたそれは木曾の口に運ばれ、バリバリと食べられていく。
俺もポテトチップスに手を伸ばした。さっきまで揚げたてだったポテトチップスはすでに冷えていて、さっきのものよりもキツめの塩味が、口の中にじんわりと広がっていった。
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