第三十一幕:日常の虹
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ありふれた日常。わりと耳にする言葉だと思うけど、改めて考えるとよく分からない。何が「ありふれた」なのだろうか。
昨日、浴衣を持った天美さんと別れる時、七夏ちゃんから「着付け5点セット」を渡されて、少し大変そうだったけど、その表情はとても嬉しそうだったな。これから天美さんにとって浴衣も「ありふれた夏の一場面」になってほしいと思う。こういう使い方なのだろうか。
トントンと扉が鳴る。俺は扉を開ける。
七夏「おはようございます☆」
時崎「おはよう! 七夏ちゃん!」
七夏「昨日はありがとうです☆」
時崎「え!?」
七夏「一緒にお買い物☆」
時崎「ああ。俺でよければいつでも声を掛けてくれていいから」
七夏「はい☆ えっと、昨日の帰りに柚樹さんがお話ししてくれた事で−−−」
時崎「あ! 直弥さんの件!?」
七夏「はい☆ えっとお父さんの模型さんに信号を付けるの、一緒にお手伝い。今日の宿題が終わってからでいいですか?」
時崎「ありがとう! もちろん構わないよ!」
七夏「くすっ☆ あと、朝食も出来てますので☆」
時崎「ああ! すぐに降りるよ!」
七夏「はい☆」
七夏ちゃんと一緒に朝食を頂く。今はこれが日常になってきているけど、「ありふれた日常」とは思えない。この日常は「期限付き」だから、ひとつひとつを大切に受け止めたい。
七夏「!? 柚樹さん!?」
時崎「え!?」
七夏「どうしたの?」
時崎「いや、なんでもないよ。この玉子焼き、七夏ちゃんだよね!?」
七夏「え!? はい☆ どうして分かったの?」
時崎「凪咲さんの玉子焼きよりも、甘みが控えめな気がして」
七夏「くすっ☆ 柚樹さんは、このくらいの方がいいかなって☆」
時崎「ほんと、美味しいよ!」
七夏「良かったです☆」
この短い間に七夏ちゃんは、俺の好みをかなり分かってくれている。しかし、俺はというと七夏ちゃんの事をどの程度、理解出来ているのだろうか!?
俺の個人的な事を殆ど訊いてこない七夏ちゃんは、どのようにして人の心に触れているのだろうか?
☆ ☆ ☆ ☆ ☆ ☆ ☆
朝食を済ませ、自部屋に戻る。七夏ちゃんは宿題を済ませると話していた。俺の宿題は、凪咲さんと七夏ちゃんそれぞれへの、ふたつのアルバム作りと、直弥さんからのふたつの頼まれごと。七夏ちゃんのように、しっかりと計画しなければならないな。今日は直弥さんから頼まれた「鉄道模型の信号機」をレイアウトする。以前に踏切をレイアウトした事を思い出す。あの時、手を添えてくれた七夏ちゃん・・・昨日、高月さんからも手を差し伸べて貰っている俺は、いつも受け身気味だという事に気付いた。控えめだと思っていた七夏ちゃんや高月さんは、積極的な所もあるようだ。天美さんの方が積極
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