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ラジェンドラ戦記〜シンドゥラの横着者、パルスを救わんとす
第三部 原作変容
序章 新朝始歌
第二十九話 王妃冊立
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にも行き場が無くなる訳だ、誰かさんのせいでな。なのにお主は知らん顔であの世にとんずらか?実に無責任だな!」

「……」

ぐうの音も出ないとはこのことだろう。確かに私は自分が死んだ後彼女がどうなるかなど全く考えたことがなかった。

「それにな、間もなくこのペシャワールにはルシタニア追討令に応えて国中の将兵が参集することになる。そんな将兵にとって、ルシタニア人のエステルはどう見えると思う?仲間だなんて言われても信じられん。隙あらば排除してやろう、と思うことだろうさ。このままでは危険だぞ?奴らが不満に思おうとどうにも出来ない立場を、エステルに与えてやるべきじゃあないか?」

「どうにも出来ない立場と言うと?」

「国王の正妻、王妃と言ったところだろう。『ルシタニアを駆逐し、国内が安定した暁には彼女を王妃として迎え入れる。異論があるのなら、武勲によって翻意させてみるといい』とでも言ってみるんだな!」

「お、王妃?ちょっとそれは…」

飛躍し過ぎではないだろうか、私はまだ彼女と何もないというのに。何とかしたい気持ちは確かにあるけれど。

「お主、自分の掲げる奴隷解放令がお主だけの代で根付くと思ってるのか?そんなのは無理だぞ?当然のように子や孫の代まで継続しなければ根付くものではないわ。そして、政策の継続性を裏付けするためにも、次代に当然に受け継がれると周囲に思わせなくてはならんのだ。つまり、政治的にもお主は配偶者を持つ必要があるのだ。で、ちょうど波長が合いそうな女性がすぐそこにいて、彼女も自分の命を張ってもいいぐらいには思ってくれてる。お主は彼女に命を救ってもらった借りもある。ここまで条件が揃って、他を探す必要が何処にある?」

「うう…ラジェンドラ殿、少し考えさせてくれないだろうか?」

ここまで畳み込まれると思わず頷いてしまいそうだ。ちょっと考えさせてもらおう。

「ああ、どうぞどうぞ。だが、『エステルを絶対に死なせないでくれ』とレイラにすがりついたお主の姿を思い出すとなあ。もう結論は出ているような気がするんだけどなあ」

足早にその場を立ち去ろうとする私に、追い打ちがかけられた。ああ、もう本当に勘弁してください、ラジェンドラ殿…。

◇◇

基本、私、レイラは余程のことがない限り、患者を面会謝絶なんて状態にはしない。重傷の人間や重病人は、一人でいると得てして暗いことばかり考えてしまいがちなので、逆に出入り自由にして、滅多に一人にならないようにすらしている。なので、エステルさんの病室にも次から次へと誰かがやってくる。

「全くもう、せっかく無傷で連れてきてあげたのにさー、お気軽に大怪我なんてしないでよねー、エステルちゃん!」

「め、面目ない…」

そうやってエステルさんを責めるのはラクシュ姉
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