アインクラッド 後編
血路にて嗤う
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かないわたしはその衝撃をまともに受け、肺から空気と一緒に呻き声を漏らす。頭に受けた衝撃で火花が散り、視界がぐらぐら揺れる。目を見開いてそれを必死に安定させると、少しずつその場の光景が頭に入ってきた。所々苔が生えた石のブロックで組み上げられた、十メートル四方くらいの直方体の空間。壁の四つ角部分に煤汚れたランタンが掛けられていて、オレンジ色の光が部屋の中を薄暗い程度に満たしている。その造りから、わたしはこの場所が何処かの遺跡系ダンジョンではないかと推測した。
「っつ……や、めて、よっ!」
襟首を掴まれて壁に投げつけられ、背中を強かに打ちつける。強いショックで再びわたしの意識が朦朧としている隙に背後に回された両腕を縄で縛り上げられ、壁に付いた金属製のフックに通して固定された。肩を揺らして引っ張ってみたが、縄が手首に食い込むばかりで緩む気配はない。
「こん、なっ、縄なんて……!」
「Wow、威勢がいいな、『モノクロームの天使』さんよ」
なおも必死にもがき続けていたわたしの顔を覗きこむ男の存在に気がついたわたしは、ビクッと大きく身体を震わせ全身の力を失った。
「『Poh』……」
うわごとのように呟いた途端、わたしを見下ろす口元の右半分がにやりと持ち上げられた。それだけで、心臓をぎゅっと握られるような恐怖を感じる。逃げるように視線を彷徨わせると、わたしを捕らえここまで運んできた残りの二人が目に映る。そのうちの一人にも見覚えがあった。全身を黒の皮装備で覆い、目の部分だけが丸くくりぬかれた頭陀袋のようなマスクを被っているのは、「笑う棺桶」幹部の一人である《ジョニー・ブラック》。彼のことは、事前の会議でも重要人物として名前が挙がっていた。もう一人は部屋の入り口に、わたしに背を向けて立っていて、足元までをねずみ色のフード付きコートで隠しているため人相や性別までは分からない。この人物はもしかしたら下っ端なのかもしれないが、今のわたしにそれを喜べる余裕なんてなかった。どの道、この浮遊城で最も恐ろしいギルドのトップと幹部一人に囚われているのは確定しているのだから。
顔を上げ続ける力もなくて、馬鹿みたいに笑い続けている自分の膝をぼんやりと眺める。
生唾を飲み込むゴクリという音が、やけに大きくわたしの脳裏に反響する。心臓がバクバクと跳ね回る。この世界に空気なんてないのに、過呼吸で意識を失いそうなほど苦しい。
「では、僕はこれで」
意識の端っこで、そんな風な声を聞いた。やや高めの、少年を想起させる声。恐らくはロングコートの人物のものだろうが、顔を上げてそれを確認するだけの気力もなかった。
「いいんすかヘッドぉ?」
それから少しして、ジョニー・ブラックのものと思しき甲高い声。
「何が
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