アインクラッド 後編
血路にて嗤う
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を半開きにして様子を窺うと、太い腕でマサキの頭を押さえつけたエギルとクラインが、それぞれ得物を抜き放ち振り下ろされた武器と鍔迫り合いを演じていた。クラインが止めている曲刀の先端はマサキの頭を捉える軌道上にあり、エギルが押さえつけていなければ、あるいはクラインが刃を止めていなければ、間違いなくマサキの頭は両断されていただろう。そしてその瞬間、マサキは今自分達が奇襲を受けたことを理解した。
それからはマサキの行動も迅速だった。一瞬のうちに身を起こし、蒼風を抜き放つ。敵の数は二人。奇襲さえ凌いだ今なら、数で押せると判断したためだ。
「お前はいい! 早くエミのところに行け!」
しかし、それを押し止めたのは敵ではなくエギルだった。
「な……」
「俺たちはエミちゃんを助けに来たんだろ! こんな場所で雑魚に構ってる時間なんてねェだろうが! ……癪だけどよ、こん中で一番強いのはお前だろ、だったらお前がエミちゃんのとこに行くべきだ。マサキ、お前ならそんぐれぇ分かるだろ!?」
クラインとエギルが共に敵の得物を弾き、猛然と斬りかかる。筋力値にものを言わせた攻めの意図するところが、マサキが転移するための時間と空間を作ることにあるのは明白だった。マサキは一度何かを言いかけた唇をぎゅっと引き絞り、地面に転がっていた回廊結晶を拾い上げ胸の前に掲げた。
「……コリドー・オープン!」
二人に対して何か声を掛けようと思ったが、いい言葉を見つけるよりも早く、青い光の渦巻く転移門が出現してしまった。マサキは雄叫びを上げて戦意を昂ぶらせている二人の背中をもう一度見、光の門に飛び込むのだった。
麻痺毒に侵され、身動き一つできずに別の場所へ運ばれていく。実際に計測してみればきっと五分と経っていないであろう道中が、わたしにはそれだけで何時間にも及ぶ拷問に感じられた。浅い呼吸を何度繰り返しても酸素を取り入れられている気がしなくて、頼んでも動いてくれない身体が勝手に震えて、足元から背中へと這いずってくる死の恐怖に押し潰されそう。
「何でこんな目に……」って、我が身の不幸を一通り嘆き終わったら、次に始まるのは遅すぎる後悔の連続だ。
討伐隊への参加を断っていれば。
安易にPohを深追いなんてしなければ。
足元の罠に気が付いていれば。
マサキ君、マサキ君と、縋るように頭の中で繰り返す。何て都合がいいんだろう。恋に夢中になって自分の実力を見失い、ピンチを大きくして自分の手に負えなくなったら泣きつく。無知で足を引っ張るだけのヒロインにはなりたくないって、あの時思ったはずなのに。
「着―いーたー、ぜっと!」
少年のような甲高い声が響いたのと同時、わたしの身体は宙を舞い、苔むした石畳に叩き付けられた。麻痺毒に侵され身体の自由が利
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