第74話『カズマ』
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気づかなかったが、この時俺は腰が抜けていたようだ。だから、振り返って最初の一歩でまずコケた。
『ウゥゥ…』
『あぁすいませんすいません! 許して下さい! 何でもしますからぁ!』
恐怖に支配され、口から出任せに謝罪の言葉を述べる。それで引いてくれるなら良かったが、骸骨だから聞く耳は持たないようで、ずんずんと俺の元へ歩いてきた。
その時、ちらと一人の手元に刀が握られているのが見える。
──あ、死んだな。
意外にも、その未来はすんなりと受け入れられた気がする。何せ既に人生には飽き飽きしていたし、何ならどこか遠くで気ままに暮らしたいとも思った。死ぬことが怖くない訳じゃないけど、別に死んでも構わないとも思って──
『──全く、どうしてこんなガキが抑止力なんだい』
刹那、夜をも照らす程の金髪が目の前でたなびいたかと思うと、いつの間にか骸骨たちがバラバラに崩れ去っていた。一瞬の出来事に、俺は口をパクパクすることしかできない。
『来な、アンタに用が有るのは儂だ』
そう言って、金髪の美人なお姉さんは手を差し伸べてくれた。一人称に違和感は感じるが、そんな些細なことはどうでもいい。今は誰かに縋りたい気分だった。
かくして、婆やと名乗る女性に案内されたのは、造りが古風な家からなる集落だった。婆やの家は集落の一番奥にあり、他よりは幾分か豪華な様相である。
中に入れてもらうや否や、俺は早速気になる本題に入った。
『…あの、用って何ですか?』
『なに、ちょっとアンタの力を貸して欲しいのさ。かくかくしかじか──』
それから話されたことはとてつもなく突飛なことで、開いた口が塞がらなかった。かいつまんで言えば、俺が魔王を倒さなければならないということ。
…いや、魔王って何だよ。マンガじゃあるまいし。
俺の怪訝そうな顔を一瞥しながら、婆やは話を進めた。
『ただ、どうもアンタには抑止力としての力が備わってないらしい』
『そりゃ、俺はただの中学生ですし』
『別にそいつは関係ないよ。異能ってのは、気づいたら身についちゃってるものなんじゃ』
『随分と軽い言い方ですね…』
生まれてこの方、異能を持ったという人に出会ったことはない。強いて言えば、学校の魔術部とかいう奴らが不思議なことができると聞いたことがあるが、まぁマジックなんだしそれくらい当たり前だろう。
とにかく、婆やの言っていることは信用に足らなかった。ごく普通の俺が、異能など持つはずがない。……少し、憧れはするけども。
『アンタ、名前は?』
『剣堂 一真です』
『ならばカズマ、剣は振れるか?』
『まぁ、剣道はやってましたけど…』
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