4. 暮煙
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もしれない。
「……ニヤリ」
「? なんですか?」
「いや別に」
「でも、そういうあなたも木曾さんと親しいんでしょ?」
突然に意味の分からない指摘をされ、頭にはてなマークが浮かんだ。あの男みたいな女と自分が親しいなぞ、言われたことも考えたこともない。
「いや、特に親しくはありませんが」
「またまた……艤装の調整の指名なんてよほど親しい人じゃないと出来ないし、受けないでしょ。神通言ってましたよ。『最近の木曾さんは目覚ましい活躍をしてるし、本人もどこかのびのびしてる』って」
「そら艤装の調子がいいですからね」
「それ以上にあなたに艤装の調整を任せられてるのが、うれしいんじゃないですか?」
「想像したことないですわ」
ひとしきり俺の髪を切り終わった美容師さんは、ワゴンの上にハサミと櫛を置いた。そのワゴンから小さなバリカンを手に取り、それのスイッチを入れる。
しかし……あいつらの艦娘としての活躍の話なんてあまり聞かないから新鮮だ。まるゆから一度『木曾さんは強い』と聞いたことはあるが、まさか一目置かれる存在だったとは……
「ニヤニヤ」
「……なんすか」
「いえ、なんでも」
意味ありげな笑みを浮かべた美容師さんは、静かに動くバリカンを俺の頬に当て、伸び切った俺の無精髭を、短く整えていった。
思ったより早く髪を切るのが終わり、美容師さんから『頑張ってください』という意味がよくわかない激励を受け、俺は美容院を後にした。
終了時に『はい。かっこよくなりました』と姿見で散髪後の姿を見せられたのだが……確かにスッキリはしたものの、正直、それが自分に似合っているかどうかはよくわからない。だが、確かにスッキリはした。髭も整えられていて、無精髭というよりは、海外の俳優なんかがおしゃれで伸ばしてる感じに見える。
想像以上に早く終わってしまったため、俺は鎮守府内をぶらぶらとふらつくことにする。頭が軽く、頬も心なしか涼しい。切る前は『めんどくさい』と腰が重かったが、切ってしまえばやはり爽快だ。『髪を切ること』という提督さんからの命令にも、今なら素直に感謝ができる。時間が余ったから、久々に残り時間を休めるし。
敷地内をしばらくぶらぶらとふらついていたら、小高くなった丘を見つけた。丘の頂上には一本の大きな桜の木が生えている。特に用事はないが、少し足を伸ばしてみることにした。
丘の頂上の桜の木陰には、セーラー服を着た女が二人いた。一人は木陰に座り、眠りこけるもうひとりを膝枕しながら本を読んでいるようだ。
「……あ、こんにちは。整備員の方ですか?」
「ああ。お前らは昼休みか?」
「そうなんです。ここで寝るのが気持ちいいみたいで……」
恥ずかしそうにそう答えるその子は、左目
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