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ラジェンドラ戦記〜シンドゥラの横着者、パルスを救わんとす
第三部 原作変容
序章 新朝始歌
第二十八話 傾城愛娘
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男女を連れて部屋に入ってきた。

「ああ、気が付いたんだね。良かった良かった。ああ、あたしはパリザード、ラジェンドラ王子麾下の傭兵団第二軍の副将をやってるよ。よろしくね!」

随分と筋肉質で豪快な雰囲気の女の子だった。この間まで連れ添っていた夫を思い出し、少し私は後ずさってしまった。

「失礼、脈を拝見します。…大丈夫そうですね。私はラジェンドラ王子の配下で医者として働いています、レイラと申します。よしなに」

意志の強そうな目鼻立ちをした、理知的な顔立ちの少女だ。脈を取る手付きも手慣れていて、宮廷医よりも信頼が置けそうに思える。

「昨夜、王宮からお救い申し上げ、今は王都近郊の廃村に潜んでおります。王妃様が落ち着かれたら出立する予定でございます。…申し遅れました。私はラジェンドラ王子の下で諜者の取り纏めをしております、フィトナでございます。よろしくお願い致します」

冷徹な印象を持つ、支配者然とした風格と圧力を感じさせる女だった。彼女が誰かの下風に立つなど容易には想像し難い。

「この三人が諜者の中で三人娘と言われてるんさー。で、私がその姉貴分でラジェンドラ殿下の忠実なる下僕のラクシュ。最近、世間では『弓の悪魔』なんて冴えないニックネームで呼ばれててガッカリさー」

弓の悪魔!ルシタニアの大司教ジャン・ボダンを射抜いたという!あの時王宮に呼んでもやって来たのは楽士だけで、堅苦しいのは苦手と彼女は来ませんでしたが、ここでようやく会えましたね。

「俺はシンドゥラのラジェンドラ王子。故あって祖国を追放され、やることがないんで傭兵団を率いて、心の兄弟のアルスラーン殿を手助けしてる。今回もアルスラーン殿に是非にと頼まれて貴方をお救いすることにした。だから感謝するんならまずはアルスラーン殿に言って欲しいね」

ラジェンドラ王子、シンドゥラの横着者と言う異名を聞いた事がある。およそ信用できるような人柄ではないという風評だが、アルスラーンを随分と気にかけているように思える。ではすべてはこの王子の、ひいてはアルスラーンのお陰なのですね。ああ、アルスラーン、あの子にはひどく冷たく接してきてしまった。今度会ったら謝らなければ。

ですが、今はそれよりも、いえ、何よりも、やっと会えた私の娘を思い切り抱きしめなくては。

「ああ、会いたかったわ、我が娘よ。私のかわいい―」

◇◇

「私のかわいいラクシュ。ああ、どうか私を母と、母と私を呼んでおくれ!」

「ええええええええ!?な、何で?何で私があなたの娘なんさー!?やっ、ちょっ、ギブギブ!ギブだってばー!」

潤んだ瞳で見つめ、上気した頬を擦り寄せ、タハミーネはきつくきつく己が娘ラクシュを抱きしめた。…いや、ちょいキツすぎ。もうちょい緩めてやって!

いやいやい
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