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真田十勇士
巻ノ百四十九 最後の戦その三

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「これよりな」
「さすれば」
「して大御所様は」
「うむ、ここにおってじゃ」
 家康は大御所のその場所から服部に応えた。
「そしてじゃ」
「そのうえで」
「采配を執るが」
「その采配は」
「お主達の場所を確認したいが」
 今城にいる者達のというのだ。
「よいか」
「こうなっております」 
 柳生が城の地図にそれぞれ名前を書いたものを差し出した、見ればそこには十二神将達の名前もそれぞれの場所にあった。
 その図を一瞬で隅から隅まで見てだ、家康は柳生に答えた。
「これでよい」
「左様ですか」
「うむ、何も言うことはない」
「では」
「このまま各自で戦うことじゃ」
「そうしてですな」
「わしはここにおる、ではな」
「それぞれ戦いまする」
 こう言ってだ、柳生は家康の前から退いてだった。正門に向かった。そして服部は一人家康の前に残った。そのうえで家康に言った。
「それがしが思いますに」
「必ずじゃな」
「あの御仁はここまでです」
「来るな」
「そうなります」
 こう言うのだった。
「真田殿は」
「そうじゃな、あの者の武を以てすればな」
「ここにもです」
「来るな」
「だからここで守り」
 そしてというのだ。
「大御所様には指一本触れさせませぬ」
「あの者が来てもじゃな」
「そうしますので」
「任せたぞ、しかしな」
「最後の最後はですな」
「わし自身もおる」
 ほかならぬ家康もというのだ。
「だからじゃ」
「大御所様も戦われますか」
「だからここにおる」
「逃れられることなく」
「そういうことじゃ、わしの最後の戦でもあると言ったな」
「だからですか」
「ここにおる」
 大御所の座、つまり自身の座にというのだ。
「そしてじゃ」
「戦われ」
「そしてな」
 そのうえでというのだ。
「あの者がここに来て若しやな」
「それがしに勝てば」
「その時はわしが戦う、そしてじゃ」
 その手にある刀の柄を握って言った。
「あの者に勝って終わらせる」
「何もかもを」
「そうしたい、しかし面白いことじゃな」
「面白いとは」
「そうじゃ、わしは天下人になったがな」
 それでもというのだ。
「それまで多くの戦に敗れてきた、特にあの者もそうである赤備えにはな」
「これまで、ですか」
「何度負けてきたか」
 こう言うのだった。
「武田家にも真田家にもな」
「ですが天下は取りました」
「しかし赤備えには勝っておらん」
 一度もというのだ。
「しかし最後はな」
「勝たれますか」
「そうする、そのうえで戦を終わらせたい」
 家康自身のそれをというのだ。
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