暁 〜小説投稿サイト〜
真田十勇士
巻ノ百四十九 最後の戦その二

[8]前話 [2]次話
「時が来ればな」
「幕府を倒しますな」
「必ず」
「そうしますな」
「そうするとしよう、時が来ればな」
 例えそれが自身の生きている間でなくともとだ、家久は決意を固めていた。そうして今は雌伏もすることにしていた。
 その頃駿府城にいる武士達の多くの者達が家に帰されていた、これは家康自らの命であったのであるが。
 このことにだ、彼等は怪訝な顔で話していた。
「妙じゃな」
「うむ、今宵城におるのは腕利きの者ばかり」
「しかも忠義一徹のな」
「そうした者達ばかり」
「少しでも腕が落ちる者は家におれと言われな」
「我等もこの通りじゃ」
 こう言い合い飲んでいた、彼等は。
「帰されてな」
「今宵は詰める筈であったが」
「この通りじゃ」
「妙じゃな」
「今宵城で何があるのじゃ」
「わからぬな」
「全くな」 
 首を傾げさせながら飲んでいた。
「一体何があるのであろう、城で」
「ううむ、わからぬのう」
「大御所様のお言葉とのことじゃが」
「大御所様は何を考えておられるのか」
「あの方のお考えは極めて深いが」
「今回もそうであるのはわかるが」
 それでもというのだ。
「一体何じゃ」
「わからぬな」
「まことにのう」
 こうしたことを話しつつ飲んでいた、そしてだった。
 城の方を見る、だが城からは何もだった。
「感じぬが」
「そうじゃな、音もせぬ」
「いつもそうであるが」
「今宵は特にであるな」
「静かじゃ」
「かえって何かありそうな」
「そうした静かさじゃな」
「今宵の城の静かさは」
 こうそれぞれ言うのだった。
「不気味なまでの」
「そうした静かさじゃな」
 特に天守の方を見て言うのだった、だが。
 その静かな城の中でだ、服部は今柳生と共に家康の前にいた。そうしてそのうえで彼に対して言っていた。
「遂にです」
「来たか」
「はい」
 こう家康に答えた。
「駿府城にもです」
「あと少しでじゃな」
「来ます」
「そうか、ではな」
「既に要所には十二神将を置いています」
 そうしているというのだ。
「そしてそれがしもです」
「わしの前にじゃな」
「ここにおります、そして」
「わしを守るというのじゃな」
「そうさせて頂きます」
「そしてそれがしはです」
 今度は柳生が言ってきた。
「正門におりますので」
「そこでか」
「はい、第一の守りとなります」
「わかった、ではな」
「はい、今より正門に赴きます」
「頼むぞ」
 家康は柳生に確かな顔で応えた。
[8]前話 [2]次話


※小説と話の評価する場合はログインしてください。
[5]違反報告を行う
[6]しおりをはさむしおりを挿む
しおりを解除しおりを解除

[7]小説案内ページ

[0]目次に戻る

TOPに戻る


暁 〜小説投稿サイト〜
利用規約/プライバシーポリシー
利用マニュアル/ヘルプ/ガイドライン
お問い合わせ

2024 肥前のポチ