巻ノ百四十九 最後の戦その一
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巻ノ百四十九 最後の戦
島津家久は家臣の者達にこう言っていた。
「真田殿は間違いなく生きて帰られる」
「はい、他の方々も」
「必ずですな」
「生きて帰って来られる」
「だからこそですな」
「その時は内密であるがな」
それでもというのだ。
「宴を開いてな」
「勝ちを祝う」
「そうしますか」
「そうせよ、幕府も知っておるが」
幸村達が生きていることはだ、幕府も何も言わないがわかっているのだ。このことは秀頼父子のことと同じだ。
「しかし表ではな」
「死んだことになっているので」
「だからですな」
「そこは内密にして」
「あえて隠して」
「そうしてですな」
「ことを進めていきますな」
「そうじゃ」
その通りだというのだ。
「そうせよ、よいな」
「わかり申した」
「それではです」
「ことをその様に進め」
「そしてですな」
「我等は」
「真田殿を歓待せよ」
生きて帰ってきた彼等をというのだ。
「よいな、そしてその後はな」
「この薩摩においてですな」
「生きていてもらいます」
「そして我等は」
「そのお世話を」
「禄はある」
幸村達を養えるそれがというのだ。
「それで以てじゃ」
「はい、以後ゆっくりと暮らして頂く」
「この薩摩で」
「そうしてもらいますな」
「戦の後は」
「もう戦もない」
こうも言った家久だった。
「だからじゃ」
「戦の世が終わったなら」
「もうあの方々は戦うことはない」
「以後はゆっくりと過ごして頂く」
「あの方々の思うがままに」
「そうしてもらう、書を読んだり修行をしてもらってな」
その様にしてというのだ。
「過ごしてもらおう」
「わかり申した」
「それではです」
「我等はそのお世話をしましょう」
「喜んで」
「そうさせて頂きます」
「頼むぞ。しかしわしが生きているうちは何もないが」
家久の目に光が宿った、そしてだった。
そのうえでだ、家臣達にこうも言ったのだった。
「わかるな」
「はい、時が来れば」
「何時かはですな」
「幕府を倒す」
「そうしますな」
「九州を統一する筈が薩摩と大隅だけじゃ」
この二国にいるままだということをだ、家久は苦い顔で言うのだった。
「幕府がある限りこのままじゃ、ではな」
「それをどうにかするためにも」
「是非ですな」
「幕府を倒し」
「そのうえで」
「取り戻すぞ、毛利家もそう考えておるしな」
家久は確信していた、周防と長門だけになった彼等もそう考えていることをだ。
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