第五次イゼルローン要塞攻防戦4
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れ出た。
苛烈なまでの攻撃が、要塞指令室まで音を漏らしている。
艦内のモニターには、逃げ惑う兵士たちが映し出され、第二層目では死体がピンボールのように飛んでいる。
目をそむけたくなる光景に、指令室の人間は声もない。
「何ということだ」
地獄にも近い光景に、クライストは唇を震わせた。
いかに防御設備が優れていたとしても、大軍からなる敵の攻撃には無力だ。
要塞は、他の部隊と連携してこそ力が生まれる。
駐留艦隊は未だに敵の先頭と団子の状態であり、援護の期待は一切できない。
「敵無人艦突入します!」
もはや報告に近い形で、より一層の激しい揺れがイゼルローン要塞を襲った。
負ける。
クライストは自問する。
この偉大なる帝国が――力を表すイゼルローン要塞が奪われる。
そんなことが許されるのか。
許されないと怒りをもって、前を向いた視界に激しく損傷したイゼルローンが映っていた。
吸い出され、あるいは悲鳴を上げて逃げ惑う兵士たち。
それらは全てクライストの大切な部下であった。
無能な、駐留艦隊の人間たちとは違う大切な部下だ。
「何をしているのだ、あいつは」
駐留艦隊の無能で、クライストの部下が死に、そして、クライストの地位まで脅かされる。
イゼルローンを失ったとなれば、陛下からの不興を買うのは当然だ。
どうすると考えて、クライストは思い出す。
この戦況を一撃で変える、魔法の力を。
「第三層目大破――」
上がってくる報告に、クライストは噛んでいた唇を、ゆっくりと開いた。
「……て」
「第三ワルキューレ部隊半壊、一度収納をおこな……え」
士官が、誰もが振り返ってクライストを見た。
指揮官席で、前方を鬼の様に見ている。
「撃てといった。トールハンマーを撃て」
「……」
憎しみにも満ちた言葉は誰にも聞こえた。
だが、理解するまでに数秒の時を要した。
「し、しかし、いまだに味方が前方に」
「構わん。このままではイゼルローン要塞が奪われてしまう――この要塞が敵を手に入れれば、駐留艦隊に倍する兵が失われることだろう。構わん、撃て、撃ち殺せ」
果たして、それは誰に向けらえた言葉であったのか。
ただ憎しみと怒りをこもったまなざしに、言葉を失った。
要塞が揺れた。
おそらくは敵の攻撃、だが被害の確認すらすることもできない。
「さっさとしろ!」
叫ばれた言葉に、反射的に顔を戻して、要塞の兵士たちは慌てたように端末を操作した。
「トールハンマー砲撃準備」
「エネルギー充填――」
副官であるバッハも、そして周囲の参謀たちもただ茫然として前方を見続ける。
これは仕方がないことだ。
そもそも最初から駐留艦
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