暁 〜小説投稿サイト〜
銀河英雄伝説〜生まれ変わりのアレス〜
第五次イゼルローン要塞攻防戦4
[6/7]

[8]前話 [1] [9] 最後 最初 [2]次話
れ出た。
 苛烈なまでの攻撃が、要塞指令室まで音を漏らしている。

 艦内のモニターには、逃げ惑う兵士たちが映し出され、第二層目では死体がピンボールのように飛んでいる。
 目をそむけたくなる光景に、指令室の人間は声もない。
「何ということだ」
 地獄にも近い光景に、クライストは唇を震わせた。
 いかに防御設備が優れていたとしても、大軍からなる敵の攻撃には無力だ。

 要塞は、他の部隊と連携してこそ力が生まれる。
 駐留艦隊は未だに敵の先頭と団子の状態であり、援護の期待は一切できない。
「敵無人艦突入します!」
 もはや報告に近い形で、より一層の激しい揺れがイゼルローン要塞を襲った。
 負ける。

 クライストは自問する。
 この偉大なる帝国が――力を表すイゼルローン要塞が奪われる。
 そんなことが許されるのか。
 許されないと怒りをもって、前を向いた視界に激しく損傷したイゼルローンが映っていた。

 吸い出され、あるいは悲鳴を上げて逃げ惑う兵士たち。
 それらは全てクライストの大切な部下であった。
 無能な、駐留艦隊の人間たちとは違う大切な部下だ。
「何をしているのだ、あいつは」

 駐留艦隊の無能で、クライストの部下が死に、そして、クライストの地位まで脅かされる。
 イゼルローンを失ったとなれば、陛下からの不興を買うのは当然だ。
 どうすると考えて、クライストは思い出す。
 この戦況を一撃で変える、魔法の力を。

「第三層目大破――」
 上がってくる報告に、クライストは噛んでいた唇を、ゆっくりと開いた。
「……て」
「第三ワルキューレ部隊半壊、一度収納をおこな……え」
 士官が、誰もが振り返ってクライストを見た。

 指揮官席で、前方を鬼の様に見ている。
「撃てといった。トールハンマーを撃て」
「……」
 憎しみにも満ちた言葉は誰にも聞こえた。
 だが、理解するまでに数秒の時を要した。

「し、しかし、いまだに味方が前方に」
「構わん。このままではイゼルローン要塞が奪われてしまう――この要塞が敵を手に入れれば、駐留艦隊に倍する兵が失われることだろう。構わん、撃て、撃ち殺せ」
 果たして、それは誰に向けらえた言葉であったのか。

 ただ憎しみと怒りをこもったまなざしに、言葉を失った。
 要塞が揺れた。
 おそらくは敵の攻撃、だが被害の確認すらすることもできない。
「さっさとしろ!」

 叫ばれた言葉に、反射的に顔を戻して、要塞の兵士たちは慌てたように端末を操作した。
「トールハンマー砲撃準備」
「エネルギー充填――」
 副官であるバッハも、そして周囲の参謀たちもただ茫然として前方を見続ける。
 これは仕方がないことだ。

 そもそも最初から駐留艦
[8]前話 [1] [9] 最後 最初 [2]次話


※小説と話の評価する場合はログインしてください。
[5]違反報告を行う
[6]しおりをはさむしおりを挿む
しおりを解除しおりを解除

[7]小説案内ページ

[0]目次に戻る

TOPに戻る


暁 〜小説投稿サイト〜
利用規約/プライバシーポリシー
利用マニュアル/ヘルプ/ガイドライン
お問い合わせ

2024 肥前のポチ