第五次イゼルローン要塞攻防戦4
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ながら、セランはアレスの表情を忘れることができなかった。
+ + +
第四艦隊の攻撃は、苛烈を極めた。
イゼルローン要塞からも防御用の砲撃が返されるが、駐留艦隊に近くで主砲が使えない現状であれば満足に攻撃を防ぐこともできなかった。いかに対レーザー用の防御壁を持っていたとしても、スパルタニアンによる接近からの砲撃やミサイルによる攻撃を完全に防ぐことはできない。
むき出しになった鈍色の金属壁に向けて、多重に攻撃が加わり、傷口を広げていく。
加わる攻撃に、イゼルローン要塞の内壁で作業をしていた技術兵が虚空の中に吸い出される。破裂する弾頭によって、幾人もの人間が塵すら残さずに消えた。
だが、生き残った人間よりは良かったのかもしれない。
+ + +
「あがっ!」
落ちてくる鉄骨に貫かれて男は叫んだ。
運よく致命傷を避けた鉄骨は、しかし、地面と男を貼り付けにしている。
第三層目の外壁には亀裂が入り、数分もすれば男がいる場所は宇宙へとつながるだろう。
だが、誰かが見ればこの場所は違和感が多かった。
貫かれた男は――そして、周囲に倒れる人間は黒色の帝国の煌びやかな軍服を着て、そして、それを正面に見る男たちも同様であった。ドックという位置ながら、作業服に身を包むものもおらず、そもそもこの場所は数十分前には完全撤退の命令が下された場所である。
人がいること自体がおかしい場所だ。
そこに誘い込まれ、そして処理をされた。
倒れた男は背後から現れた人間によって、銃を抜くことすらできなかった。
そして、それをいまだに正面の男は理解していない。
「何をしている、さっさと助けろ」
叫ぶにも痛みが走るのか、いくばくか声を殺して呟いた言葉。
それを冷ややかに見ていた男たちはゆっくりと振り返った。
「こ、こんなことをしていいと思っているのか」
「この場所で死んだところで誰にもわからないと、先ほどおっしゃったでしょう」
冷ややかな言葉を残して、男たちは内部の隔壁へと走っている。
遠ざかる背中に、痛みと恐怖で男は涙と涎で顔をぐしゃぐしゃに歪める。
「待て、いや待ってください。助けて――」
叫んだ瞬間、外壁の亀裂が深くなり、外へと吸い出す力が働く。
嫌だと、貫いた鉄骨を無視して体が動き出すのを、耐えながら、男は叫ぶ。
傷口が広がって、激しい痛みに、首を振って、ただ嫌だと繰り替えた。
男たちの背中が、隔壁へと消えていく。
「嫌だあああああああ」
悲鳴に似た叫びをあげて、男――クルムバッハ少佐の体は千切れ飛んだ。
+ + +
「第三層目まで破損! 第二十一ドックは使用できません」
「何という事だ」
力のない声が、バッハから漏
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