第五次イゼルローン要塞攻防戦4
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とになるだろうが、それを不満に思う暇などない。
視線を走らせれば、ローバイクが撃ち込まれる敵のミサイルに、声を張り上げて撃墜の命令していた。誰もが暇すらなく、自らの任務に没頭し――その結果として最前線ながらにいまだに敵の攻撃を正面から受け止めている。もし、彼らが優秀ではなかったのならば、後方から応援としてきている第八艦隊にこの場を任せて、早々に後退して、休息をとれていたかもしれない。
どちらが良いと判断するのは、難しいが。
受け取った報告を手にして、初めての戦場。そこに立つ艦橋の様子に彷徨っていた視線が、次の報告先であるスレイヤーを見つけた。
その隣に立つ、アレス・マクワイルドの姿を見る。
走り回り、あるいは走る必要がない参謀であっても戦況に目を血走らせている。
その中で、彼だけは異質だ。
形ばかりにベレー帽をかぶりながら、前方のモニターを見ている。
彼自体はこの艦隊の参謀ではなく、全体の参謀であって――この艦にきているのは、その代理。アレスの仕事は、総旗艦との連絡調整であり、この艦に対しての命令権はない。
実質的にこの艦でやれることはないのだが、スレイヤー少将の近くで立っている。
落ち着いた様子に凄いと思うのは、半分。
残った半分は、手伝ってほしいという無茶な願いだ。
立場があるために、それはセランの我儘であるのは理解しているが、彼が動けばもっと楽になるのではないだろうかと、そんなことを思ってしまう。
そんなことを考えていて、セランはふと疑問に思う。
連絡調整であれば、彼があの位置に立っているのはなぜだろうと。
仕事がないのであれば、目立たない位置に下がればいい。
すぐにスレイヤーに伝える必要はあるかもしれないが、前に出て戦況を見る必要もない。
実際に、目立つ位置で何もせずにいるアレスを周囲の参謀が不快げに彼を見ていた。
そんなに戦況が悪いのか。
視線を前方に向ければ、前方に変わった様子はなく、第四艦隊の攻撃はより苛烈になって、イゼルローン要塞を襲っている。
戦いは有利に推移している――では、なぜと。
視線をアレスに向けて、セランは背筋を震わせた。
笑った。
ゆっくりと唇を上にあげていく。
それはいつかの――楽しくも、嬉しくも、狂気すらも含むような笑い。
その笑みに、不快を表していた周囲すらも声を飲まれている。
「サミュール少尉――セラン!」
硬直が、背後の声から聞こえた。
ミシェル・コーネリアが、怒りの視線を向けてきていた。
「聞いているの。ぼーっとしている時間はないわ、それを早く少将に」
「申し訳ございません」
即座に謝罪の言葉をして、振り返った視界では既にアレスは元の表情に戻っていた。
駆け出し
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