第五次イゼルローン要塞攻防戦4
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分が生きているのが、運であったという現実。
生きるために、全力にならなければならないと理解させられた。
今を生きているのは当然ではない。
だから。
ラインハルトに止められた言葉をキルヒアイスは呟いた。
「私もまた全力でなければならないのだと」
アレスは歴史を変えていく。
それは――同盟軍だけに限った話ではなかったが。
+ + +
「総司令官から入電です。陸上部隊の突入は、いましばらくかかるとのこと」
「そうか……」
アレスの言葉に対して、スレイヤーは小さく息を吐いた。
その後、繰り出した命令は端的だ。
「敵を抑え込め」
スレイヤーの命令は、端的に、ただ必要なことだけが伝達された。
それを把握し、素早く行動するのは訓練のたまものだろう。
第八艦隊の応援があるとはいえ、駐留艦隊に対して正面から対峙するのは、最前線の第五艦隊――その最前線に立つスレイヤー率いる分艦隊であった。
驚くような派手な動きも、攻撃もない。
派手に敵の要塞に対して攻撃するのは、第四艦隊の攻撃部隊だと割り切り、自らの任務を――第四艦隊に対して邪魔をさせないことを目指した戦いだ。
当初はイゼルローン要塞へと撤退しようとしていた駐留艦隊であったが、さすがに撤退は無理と悟ったのか、今では少しでも距離を取ろうと、あがき続けている。
時には後退し、時には前進して回りこもうとする動きは、決してヴァルテンベルクが無能なだけの将ではないことを表していたが、それらを予測して、スレイヤーはただ敵を邪魔する。嫌がらせにも近い戦闘であったが、いたって真面目だ。
分艦隊旗艦ゴールドラッシュの艦橋では騒々しさと慌ただしさが広がっていた。
喉が枯れんばかりの叫びと機械音。
もはやこの状態であれば、参謀見習いといえどもじっとできる状況ではない。
セラン・サミュールも一人の兵士として、報告の束を抱えながら、艦橋を走り回った。
「第十一分隊旗艦損傷――予備がありません」
「第十二分隊に統合するよう伝えろ!」
逐一入る報告を、全てスレイヤーに任せるには無理がある。
分艦隊だけで数千もの艦を操っている。
いくつかは分隊にわけて、それぞれの旗艦戦艦が指揮をしているが、上がってくる細かい報告を振り分ける
目も回るような忙しさに、セラン・サミュールは息を吐く間もなかった。
「ありがとう、これをスレイヤー少将に」
持ってきた報告を受け、ミシェル・コーネリアから疲れたような礼を受け取った。
美しい顔立ちには疲れの色がにじみ、長い髪は汗で頬に張り付いている。
拭った汗で、当初は薄くされていた化粧も落ちてきていた。
渡した報告の代わりとばかりに、受け取った報告。
また走るこ
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