3. 人煙
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めた。
「なぁ徳永。これから俺たちの艤装は、お前に整備と調整を頼むよ」
「は? 指名なんて出来るのか?」
整備員の指名なんて出来るのか? 俺達はいつも割り振られた艤装をただ機械的に調整していくだけだ。ここに勤めて俺も長いが、俺自身、艦娘から指名なんてされたこともなければ、指名された奴の話も……そもそも出来るなんて話も、聞いたことがない。
「木曾さん、そんなこと出来るんですか?」
それはまるゆも同じだったようで、口に牛乳の白ひげをつけたまま、不思議そうに木曾にそう問いただす。
「……俺も知らないし聞いたこともないけどな……でも」
俺とまるゆの視線を受けながら、木曾はククッと笑い、そして……。
「どこかの優しい提督なら、それぐらいやってくれるんじゃねーかな? なぁ提督?」
と、意地悪そうな笑みを浮かべ、今俺たちの目の前で鳳翔から手ほどきを受け、何かをコトコトと煮付けている提督さんに話を振った。
「んん!?」
これは提督さんも予想外だったらしく、木曾にそう話を振られるなり、提督さんは素っ頓狂な声を上げた。その途端に隣の鳳翔から「提督、鍋から目を離さないで下さい」と優しく静かに注意をされたのが、提督さんらしくてどうにも可笑しい。
「なぁ提督? アンタなら、それぐらいの融通は効かせてくれるよな?」
そんな提督さんに、さらに追い打ちをかける非道な女、木曾。『相手が忙しい時を狙え』という、人に物事を頼む時のコツをしっかり理解してやがる。
しかし、そういう無理なわがままを楽しそうに訴えられるあたり、こいつら艦娘がどれだけこの提督さんを信頼しているかがよく分かる。料理が趣味だなんてずいぶん腑抜けた軍人だとも思ったが、人に好かれる優しいタイプなんだろうな、この人は。
「どうなんだ? 俺たちの戦績をもっと伸ばすチャンスだぜ?」
「んー……」
「……それとも、不十分な調整をされた艤装で、俺達の活躍の邪魔をするのか?」
鍋から目を離さず、考え込む提督さんに対し、木曾は容赦なく追撃をかけていく。提督さんを見るまるゆの眼差しにも、次第に期待がこもり始めた。
やがて観念したのか、提督さんは鍋を見つめたまま苦笑いを浮かべ……
「……わかった。二人の艤装は、徳永さんが調整するように手はずを整えとくよ」
と呆れたように言い放った。
提督さんの言葉を聞いたまるゆは『やったー!』と両手を広げてバンザイしやがった。木曾は木曾で提督の言葉を聞くなり、俺の方を振り返ってニッと笑い、
「だそうだ。これからよろしく頼むぜ徳永?」
と俺に念を押してきやがった。こいつら……余計な仕事を増やしやがって……
しかし、不思議と悪い気はしない。
こいつ
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