2. 喫煙
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かしくて仕方ないらしい。
やがてひとしきり一人で笑った木曾は、ニッと笑いながら俺に向き直り、事の真相を教えてくれた。
「まるゆだよ」
「まるゆ……あの小僧か」
「あれでも女なんだ。小僧は勘弁してやれ。あいつはタバコの煙がホントにダメなんだ」
「……そういや、あの時むせてるのはアイツだけだったな」
「だろ? 俺は平気だ。だから遠慮してないで吸えよ」
そう言って木曾はニコッと微笑む。これを口に出したら木曾に殺されそうだから言わないが、その笑顔に女の可愛さや可憐さはない。どちらかと言うと、男の悪友が見せるそれに近い。
控えろと言ったり吸えと言ったり……若干の腹立たしさを感じたが、それは木曾の気遣いの一つだと思うことにする。胸ポケットからタバコのソフトケースとライターを取り出し、一本を咥えてライターで火をつけた。
タバコの煙を吸い、吐く。途端に俺と木曾の身体に、タバコの煙がまとわりつく。
「臭えな」
「だったら吸えとか言うな。消すか?」
平気だと言ったり臭いと言ったり、よくわからんやつだ……もうひと吸いしたあと消すかと、灰皿を手元に移動させた。軽くひと吸いした後、まだ充分な長さが残っているタバコを灰皿に押し付けたが……。
「いや」
おちょこを煽る木曾が、俺を制止する。おちょこを置いた音がコトリと鳴り、木曾が俺を見てニッと笑った。
「……これがお前の匂いなんだろ?」
「……」
「いいから吸えよ」
微笑みながらそう話す木曾の目は、相変わらず澄んでいる。
気恥ずかしくなり、灰皿に目をやった。さっき灰皿におしつけられた俺のタバコからは、まだ細い煙が立っていた。
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