2. 喫煙
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やつが、腰を上げた。
「よう徳永。来てくれたみたいだな」
そいつは黒の制服も羽織ってないし、サーベルも腰につけてないが……どうやら木曾のようだった。『キソー』て呼ばれてるし服もぜんぜん違うから、一瞬誰か分からなかった……。
「……なんだ。木曾か?」
「ああ」
「全然違う服装だから分からなかったぞ」
「姉たちに言われてな。今日は昔の服装でいろってさ」
そう言って困ったような苦笑いを浮かべ、木曾は俺の隣りに座った。座敷の方から『キソーが逃げたクマッ!?』と声が上がっていたが、本人はあまり気にしてないようだ。
提督さんが、木曾の前に徳利とおちょこを置いた。木曾が自分でおちょこに注ぐのを見て、『ついでやればよかった』と後悔したが、本人はさほど気にしてないようだ。笑顔で酒を注いでいた。
「服装でもしやとは思ったが、整備班だったんだな」
「作業服だからな。汚れてるし」
「ああ」
俺の前にも、提督さんが瓶ビールとコップを置いてくれる。コップにビールを自分で注ぎ、おちょこを構えている木曾に向き直ってやった。
「んじゃ」
「おう」
「新しいダチに」
「「乾杯っ」」
コップとおちょこをチンと合わせ、ビールを煽る。俺ももう若いとは言えない歳になったが、まさかこの歳になってこんな飲み友達が出来るとは思ってなかった。その事実は、俺の胸を少しだけ、昂ぶらせた。
木曾は旨そうに酒を煽った後、テーブルの前の灰皿に目をやった。俺はタバコを吸ってないし、出してない。だからガラス製の灰皿はキレイなものだ。
「なぁ」
「あ?」
「今日は吸わないのか?」
広角を少しだけ上げてニッと笑い、木曾が俺にそう聞いてくる。眼帯で隠れてない方のこいつの目は妙に澄んでいて、心の中を見透かしていそうで怖い。
しかし、『吸わないのか』とはまた勝手なことを言う……この前タバコを吸う俺に『控えろ』って言ったのはお前だよなという言葉を、すんでのところでビールで飲み込んだ。口の端だけ上げるこいつの笑顔が、少し腹立たしい。
「お前、苦手なんだろ?」
「は? 俺がか?」
少しだけ遺恨を込めて事実をつきつけてやったのだが……以外にもこいつは、自分のことを指差し、目を見開いてきょとんとしやがった。わざとらしいヤツだと思ったが、そんな感じは、こいつの様子からは見受けられない。
あとその様子は、男みたいなこいつにしては珍しく、柔らかく、女らしい反応に見えた。
「別に苦手じゃないが」
「んじゃこの前はなんで俺に控えろって言ったんだよ?」
「……ああ、あれか」
俺の追求に対し木曾は、おちょこを煽った後、俺から顔をそらしてクククと笑う。何かおかしなことを言った覚えはないが、木曾は今の俺がお
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