2. 喫煙
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は自分のそばにある、整備中の艤装に目をやる。
「……」
俺は整備をするだけだからあまり深く考えたことはないが、こいつらが使ってるこの艤装ってのは、紛れもなく武器の一種だ。時には誰のものかわからない血や肉片が、艤装にこびりついてるときもある。大破して戻ってきたやつの艤装を整備してたら、部品と部品の隙間にそいつの右手が挟まってたこともあった。
……つまりこいつらは、それだけ危険な任務に従事してるということだ。その事実が、木曾の目を鋭くさせているんだろう。まるゆは気付いていないのかもしれないが。
「なぁ」
ふいに木曾に声をかけられ、俺は我に戻った。
「ん? どうした?」
「俺は木曾だ。お前、名前は?」
「徳永だが……」
「……徳永、これも何かの縁だ。今晩ヒマなら、また店に来いよ。一緒に飲もうぜ」
木曾はそう言って俺を晩飯に誘ったが……正直、この小僧がいるとタバコも吸えないし……そう親しいわけでもない。すんなりと『行こうぜ』という気には、ならなかった。
「わかった。考えとくよ」
「ああ。んじゃまたな」
そんな俺の返事が気に入らなかったのかどうかは知らないが……木曾はそれだけ言うと、まるゆを連れて出撃ドックの方へと向かっていった。
「徳永さん! また!」
「ああ、お前らも気をつけてな」
「はーい!」
そういってこっちを振り返り、元気よく敬礼を返す、まるゆのいじらしさに胸を打たれたんだろう。さっきはあんなに気乗りがしなかったのに、『今晩も店に行くか』と思いながら、俺は引き続き主砲の整備に勤しむことにした。
あるいは……あいつらが背負う、艤装のせいもあったのかもしれない。俺が見送るあいつらの背中は、妙に大きく見えた。
夜になって、自分の仕事がすべて終わった後、俺はこの前の小料理屋『鳳翔』へと足を伸ばした。店につくと、相変わらずの佇まい。入口前の吸い殻入れの一斗缶の前で一服した後、俺は店の入り口の引き戸を開いた。
「だからって姉ちゃんの膝の上で寝るのはやめるクマッ!」
「だって球磨姉の膝、気持ちいいニャ……」
「そら言えてる」
「北上さんっ! 私の膝ならいつでも空いてますっ!!」
今日もまた賑やかな連中がいやがる……カウンターに目をやると、この前と同じく提督さんと割烹着の艦娘が立っている。
「やあ。また来てくれたな」
「ええ」
提督さんが屈託ない笑顔で声をかけてくれた。適当に相槌を打って、店内を打って見回す。眼に入るのは、今座敷で騒いでいる五人組だけだ。まるゆと木曾の姿は、見当たらない……そう思っていたら。
「キソー、来たぞ」
「アンタも俺をそう呼ぶか……チッ」
提督さんが声を張り上げ、その五人組の一番奥の席にいた
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