1. 嫌煙
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方は小僧の制止を聞かず、ただこちらをジッと威圧し続けている。
喫煙可の店内なのに少々理不尽な気もしたが、小僧の咳き込む感じは、ほんとに煙が苦手なやつが見せる咳き込みだ。手元に持ってきた灰皿に、まだ火をつけて間もないタバコを押し付け、火を消した。
「これでいいか?」
「ああ。ありがとう」
多分、今の俺の頭にはもじゃもじゃ線が出来ていたと思うが……そんな俺に対し、その異様な女は礼を言って、表情を少し和らげた。火を消したタバコからはまだうっすらと細い煙が昇っていたが、それはすぐに途切れた。
「ありがと」
そう言って提督さんがお通しと思われる、水なすのぬか漬けを俺の前に出してくれた。
適当に相槌を打ち、ビール瓶からコップにビールを注ぐ。思った以上に泡立ってしまったビールを煽り、水なすに醤油を垂らして、俺はそれを口に運んだ。
さっきの小僧と女は、相変わらず楽しそうに話をしてやがった。一人なんで何もすることがなく、店内の様子を伺っていたら、時々そいつらと目が合った。
「……あ」
小僧は俺と目が合うと、小さくペコリと頭を下げた。
「……」
異様な女の方は、俺と目が合うと、フッと微笑んでいた。
小僧の方の名前は『まるゆ』、男みたいな異様な風貌の、緑の髪の女の方が『木曾』ということを知ったのは、後日、整備場で顔を合わせたときのことだった。
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